幕間-01 「ケナ婆」/Kena nonna
「おーい、ばあちゃんいるかー」
食後にお茶を飲んでいると、孫でこの村の村長・サンノが血相を変えて飛び込んできた。
「なんだい・・・サンノ。そんな慌てて・・・」
「それが、どうやらルージュとアマリの姉妹が帰ってきてないらしい」
「別にあのお転婆姉妹が、2~3日留守にしたりすることはよくあるだろうに。お前さんは心配しすぎなんじゃよ。いくら死んだ両親の親代わりだからって・・・」
「それがいつもとは違うんだよ、これみてくれよ・・・」
サンノは、持ってきた袋の中身を机の上に広げた。
「・・・この弓は・・」
「そうだよ、ばあちゃん。これルージュの弓とアマリのナイフ。それに、ほら他にも」
「これをどこで拾うたんじゃ?」
「今朝、水を汲み行った者が森の中で・・・」
「で、二人の姿は?」
「あぁ、それはどこにも。ただ・・・」
「ただ、なんじゃ」
「荷物の周りには、熊の足跡があったって・・・」
「ただの熊ならルージュ一人でも、なんとかなるじゃろう?」
「大きさから、もしかしたらオグルベアかも知れないって」
「!!!」
「どうしたらいいかな」
「あの2人はまだ子供じゃが、この村でもかなり腕の立つ方じゃ。相手が本当にオグルベアであれば、当然気づいて逃げとるじゃろ。それにアマリの魔法があれば問題なく逃げられるはずじゃ。ルージュも相手の強さが分からぬほど未熟でもあるまいて。よほどの事がない限りは大丈夫じゃよ・・・」
「そうか・・・そうだよな。じゃ、荷物は逃げるときにでも落としたか、捨てたって事か・・・」
「じゃがこのまま何もせん、という訳にもいかんな」
「オグルベアの方か・・・」
「仮にあの二人が逃げきれたとしてもじゃ、村の近くにそんな強力な魔物がおるというは・・・。近いうちに討伐も視野にいれんといけんのう」
「そうか、やっぱりそうなるか」
「討伐の方は、もうすぐ商人のブルーノ達が村にやって来るじゃろうて。その時にでもブルーノの護衛に事情を話して協力を願うのがよかろう」
「まぁ護衛と言っても冒険者ですから。お金を出せば引き受けてくれるでしょうね。ただ後付けでの依頼になるので冒険者
「金のことは仕方あるまい。今から
「わかった。なんか分かったら、ばあちゃんにもすぐ知らせっから」
そう言って、サンノが慌ただしく出て行った。
「まったく、あのお転婆姉妹は・・・いつも心配ばかりかけおって。戻ってきたらたっぷりと説教してやらんといかんな。しかし今回の事は何かの始まりのような気がしてならん・・・。最近よく感じる厄災の前兆なのか・・・いや、何か吉兆の前触れのような気もする・・・思えばあの二人の先にはいつも光が見えていた。今回の井戸枯れも、厄災の復活も、村にとっては問題だらけじゃが・・・そこまで悲観せんかったのは、あの二人がいたからじゃ・・・どうか無事でいておくれ」
ケナ婆は、机の上の弓とナイフを手に取り、改めてルージュとアマリージョが戻ることを願った。
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