第21話 ダンジョンへ

 それから俺はダンジョンへ潜ることに決め、アーデルさんからダンジョンについて様々な情報を聞いた。


 ダンジョンに現れる魔物は通常の魔物とは違い、死ぬと肉体が霧のように消え、魔石を落とす。そしてダンジョンの五階層ごとにボスと呼ばれる強い魔物が現れるのだが、それを倒すと魔石の他に極稀に『叡智の書スキルブック』などが手に入る可能性があるとのこと。


 魔石だけでもかなりの収入を得ることができ、一攫千金も夢ではないが、俺の場合は様々な魔物からスキルを得ることもできる夢のような場所だ。


 そしてダンジョンはとても広く、下層に行けば行くほど魔物の強さが上がっていく。現在は19層まで攻略されているが、そこからどこまでダンジョンが続いているのかは未だに判明していないらしい。


 俺は約一ヶ月間で行けるところまで行ってみたいと思っているが、ダンジョンは広いため、水は生活魔法でなんとかなるとしても食料は持ち込まなければならない。その食料を他の冒険者たちはどうやって沢山持ち込むのかとアーデルさんに聞いてみた。


「大半の冒険者はそんな深い階層に行くことはない。そのため食料は数日分しか持ち込まないと聞く」


「それじゃあ深い階層に行く冒険者はどうしているんだろう」


「一流の上級冒険者だと、大半がアイテムボックスを持っている。それによって大量の荷物を持ち込むことができているんだ」


「アイテムボックス?」


 そんなものがあったのか、ぜひ入手しなければ。


「ダンジョンで稀に落ちるアイテムで、見た目以上に荷物を入れることができる空間拡張されたバッグのことだ。また、空間魔法のスキル持ちがアイテムボックスを製作することができるが、その流通量は少なく、そして値段も高い」


「大体いくらくらいで買えるかな?」


「そうだな、容量がどれだけ入るかにもよるが、安いものでも金貨300枚はするだろうな」


 高すぎる……。金貨100枚は持っているから買えるだろうと思ったが甘かったようだ。

 よくよく考えてみれば冒険者だけではなく、商人なら誰だって欲しがるものだ。そんなものが安く手に入るのだったら商人が買わない筈がない。


「かなり高価な物なのか……さすがに手が出せそうにないや」


 俺がアイテムボックスの購入を諦めるような素振りを見せると、アーデルさんが突如立ち上がり、室内にあるクローゼットから茶色の革で作られた鞄を取り出すとそれを俺に渡してきた。

 その鞄は縦長で円柱の形をしていて、口に付いている紐を引っ張ると閉まるような物だ。


「アイテムボックスが必要なのだろう? 私が以前使っていたものだ。貸してやろう」


「ありがとう。本当に助かる。汚さないように注意するよ」


 そうお礼をいった後、軽い雑談をし、この日は解散となった。

 次に会うのは俺がダンジョンから戻ってきてからになる。


 翌日の早朝、俺は剣を購入するためドワーフのドイルさんが経営している武器屋に行き、ミスリルで作られたロングソードを金貨20枚で購入。

 その際にドイルさんから「新人冒険者が使うならもっと安いものでもいいのではないか」と言われたが、「どうせ買うなら良い武器が欲しい」とドイルさんを説得?して売って貰ったのだった。



 俺は店から出るとすぐに新しい武器を腰に装備し、そのままの足でダンジョンへ向かう馬車に乗り込み、三日ほど馬車の中で暇を持て余していた。


 移動中の馬車の中で俺は、自分を対象にして『心眼』を使い、自身の情報を調べたのだった。その結果はこうだ。



―――――――――――――――――――――――


 アカギ・コウスケ



 神話級ミソロジースキル 『血の支配者ブラッド・ルーラー』Lv10

 身体能力上昇・極大、魔力量上昇・極大、血流操作、対象の血に触れることで任意のスキルを複写し、獲得



 英雄級ヒーロースキル 『心眼』Lv4

 情報の解析、情報隠蔽、動体視力上昇・大



 上級アドバンススキル  『万能言語』Lv―

 あらゆる言語の理解


 上級アドバンススキル 『成長促進』Lv5

 全所持スキルの成長速度上昇・中



 スキル 『気配察知』Lv3

 周囲の生物反応の察知


 スキル 『剣術』Lv3

 剣捌きの向上、身体能力上昇・小


 スキル 『投擲』Lv2

 投擲技術の向上、命中力補正、身体能力上昇・小


 スキル 『火魔法』Lv1

 火属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・小


 スキル 『土魔法』Lv1

 土属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・小


 スキル 『風魔法』Lv2

 風属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・小


 スキル 『毒耐性』Lv4

 毒に対する耐性の上昇



―――――――――――――――――――――――


 こう見ると、かなりスキルの数が増えたと自分でも思う。

 アーデルさんから貰った『心眼』の能力も凄いが、ゴブリンキングから獲得した『成長促進』はかなり便利な能力だ。このスキルを獲得できただけでも、あの依頼をやって良かった。




 そして三日後、俺を乗せた馬車はダンジョンがある地域に到着した。


 ダンジョンのある地域はちょっとした街になっていて、多くの冒険者で賑わっている。

 街には武器屋に飲食店、宿屋などの様々な店があったが、俺がもっとも気になったのはダンジョンがある小さな街にも冒険者ギルドがあったことだった。


 近くにいた冒険者らしき人に聞いてみると、その冒険者ギルドでは依頼などは出されてなく、基本的にダンジョンで手に入る魔石やアイテムなどの買い取りをする場所として存在しているとの話だ。


 俺は到着したその日に、いきなりダンジョンへ潜るようなことはせず、馬車の移動で座り疲れたこともあり、ご飯を食べてから宿屋で一泊し、翌日にダンジョンへ向かう事にしたのだった。



 翌朝、俺は保存の効く食料を大量に買い込み、アーデルさんから借りたアイテムボックスに入れた。アイテムボックスの中は時間が停止しているということはないため、俺は保存食を買い込んだのだ。


 そして準備が整い、俺はダンジョンへ向かった。

 ダンジョンの地上部は古い神殿の様な建造物が建っていて、その神殿から下へ階段を降りるとダンジョンに入ることができる。


 神殿のようなこれがダンジョンなのか。確かにこんな神殿にダンジョンがあるのなら『邪神が眠る地』という異名も分かる気がするな。


 神殿の前には冒険者が列をなしていた。どうやらダンジョンに入るためには一度、冒険者カードを提示する必要があるためらしい。

 何故なら戻ってこない冒険者が数多く出るため、冒険者の出入りを記録しているとのことだ。


 ようやく俺の順番が回ってきた。

 俺は冒険者カードを門番の人に渡すと、門番は渋い顔をしてこちらに話しかけてきた。


「まだEランク冒険者じゃないか。このダンジョンはかなり危険だ。入るなとは言わないが、決して無理をしないように」


 俺は軽く首を縦に降り、冒険者カードを返してもらってから神殿の階段を降りていく。

 俺の今の気持ちは不安と興奮がない交ぜになった不思議な感覚だった。


 さて、どこまで行けるかわからないけど頑張ってみるか!


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