第百十二話『殺し合い開始』

 

 ──────気付けば、僕達は刃を交えていた。

 葛藤する時間はあった。

 僕には人は殺せない、と妄言を垂れる暇だってあった。

 けれど、刃を下ろして思案に暮れる余地など無い。

 ロベリアは、そう言う暇さえ与えぬ狂気人だ。

 戦わず殺人を否定すれば、多分もっと重いルールを追加してくるだろう。

 そう言う野郎だと、僕達は理解した。

 だからこそ、僕たちは刃を交える。


 火花を飛ばしながら、その裏で作戦会議をする為に。

 さすれば、 観客は仮初めの殺し合いに滾るだろうさ。


『どうすればコロシアイを逃れられるか』

 ───その題の答えを、僕達は議論している。

 戦いは飾り。

 裏には計略を巡らせる。

 ……ロベリア打倒の為に。


「……とりあえず殺し合いを演出したけど。どうする?」

 モイラは、剣を斬りさげつつ問うてくる。

 僕はそれを側転ついでに躱し、剣を足で抑えながら、


「鍵付き魔法異次元空間の所為で許可無いと出れないしね……」

 モイラは抑えられた剣を軽く払って僕を振り除けながら、呟いた。


因果剣リアリティ・アルターで 出れたりするんじゃ無い?」

 睨み合った僕は、小さく頭を振り、


「いや、この空間はかなり特殊で脆い作りになってる。多分無理だね」

 と、拳の突きを繰り出しながら断った。

 だがモイラはそれを腕で受け、僕を上へ吹き飛ばし。

 勢いのまま上を向いて、睨み合い。

 そして呟いた。


「そう。なら……殺り合うしか無いね」

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