PM2:02
凍った……ように、見えた。
俺の目に映る全てが、ぴたりと動きを止めたのだ。
あかみちん、勇者たち、様々な魔術、木々の揺らめき、風の流れ、舞う土埃。
その全てが。
「おいおい、まさかこれってアレか? 時間を止める的な……」
真っ先に浮かんだその考えは何ともバカげていたが、俺の手には光るネクロノミコン。バカげている、と決めつけることそれ自体がバカげてる。
よし、仮にこの現象が時間を止めたせいだとしよう。俺は、どうする?
「……ひとまず、逃げとくか」
空中で制止する炎やら電撃やらを細心の注意を払って避けていく。好奇心で止まった炎に触れると、めっちゃ熱かった。こんな状態でもやっぱり炎は炎らしい。
どうにか魔術の包囲網を潜り抜けた俺は、改めてネクロノミコンを見やる。先ほどよりも纏う光が弱々しくなっているように見えた。
「この光が消えたら、時間も動き出すのか……?」
うん、そういう事にしよう。なら、残された時間を使って俺は何をする?
時刻は2時2分。この現象が元に戻るまで、あの時計は微動だにしないはずだ。
となると、時間が動きだした瞬間、残り3分間逃げ回る必要が出てくるわけだ。今のは、とりあえず窮地を脱しただけだからな。
なら、残り3分を生き抜くために俺がすべき事は何か。
「……よし、こいつらの魔術書を没収しとこう」
思い立ってすぐに動く。動かない人間の手元から魔術書をひったくるだけの簡単なお仕事だが、80人分だ。とっととしないと。
手軽に回収する魔術ってねぇのかな。そんな事をぼやきながら、俺は校庭を駆けずり回るのだった。
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