PM0:36
く、いいだろう。俺の生き様を見るがいい!
意を決して、重箱の一つに箸を伸ばす。まずは様子見、卵焼きだ。この出来如何で料理の腕も推して知れるってもんだ。
さぁ……勝負!
「…………」
口に放り込み、ゆっくりと噛み締める。と、生徒会長がちらちらとこちらを伺っているのが見えた。
感想を言え、という事だろうか。俺はしっかりと卵焼きを味わい、飲み込んだ。
「ど、どうでしょう、か……?」
「…………い」
え? と生徒会長が不安げな表情に。
「美味い……美味しいぞ、生徒会長」
「そ、そう? 良かった……!」
心の底から安堵したような声。何と言うか、少しお堅い印象が取れているように見える。
そう、美味しかった。とっても。甘い感じのヤツじゃなく、塩味の利いたご飯に合いそうな卵焼きだ。
勢いがついた俺は、他の料理にも次々と箸を伸ばす。その全てが、美味しかった。いくらでも食べられる……と言うのは少し誇張かもしれないけど、この重箱達を全部食べてみたい、と思えるくらいには、美味しい。
「料理には少し自信があるの……人に食べてもらうのはこれが初めてだから、そう言ってくれて嬉しいわ」
「そうなのか」
そう言って笑う彼女は、本当に嬉しそうだ。何となく俺も嬉しくなる。一瞬でもマズいかも、と思った事を詫びたい。
こういう平和すぎる時間はちょっと警戒したくもなるんだが……うん、さっき俺死んだしな。その反動が来たんだと思う事にする。これくらい、バチは当たらないはずだ。
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