PM0:28

「それでは、本題に入りますね」


 生徒会長が見回すと、しん、と静まり返る。やっぱオーラすげぇわ。


「本題ってのは?」

「今朝の事です。遅刻について」


 まぁ、そこしか接点ねぇしな。


「なんかペナルティでもあるんすか」

「いえ、そうではありません」


 自然と語調が鋭くなる俺に、申し訳なさそうに言う生徒会長。……いや、お前ら。生徒会長を困らせてんじゃねぇよ、的な目で俺を見るな。親衛隊かなんかか。


「今回、不躾ながら教室まで来たのは謝罪の為です」

「……謝罪?」

「はい。アメフト部とサッカー部に確認を取り、あなたの登校を阻害したと言質を取りました。三崎君の言うように、非は学校側にあった」


「へ? わざわざ部活に連絡を取ったんですか?」

「はい」


 事も無げに言うが……確かあの時、俺は部活のヤツらに邪魔されたとは言ったが、どの部活かまでは言ってなかったはず。つまり、生徒会長は全ての部活に虱潰しに連絡を取ったことになる。


 わざわざそこまでするとは、噂通りに几帳面、もっと言えば高潔な人柄だ。もしくは、俺の必死な訴えが多少は功を奏したのだろうか。


「あぁ、えっと、別に謝罪なんていいですよ。そこまでして貰えただけで十分です」


 本心だ。朝に感じたあのムカムカを払拭して余りある清々しさが、今俺の中を支配している。やっぱ、基本はまともな人なんだ、生徒会長は。


 が、生徒会長は首を振る。


「いえ、あなたが許しても、私が許せません。遅刻、という言葉だけで全てを理解した気になり、その他の部分に目を向けなかった。考えが及ばなかった。生徒会長として、あるまじき過失です」


 いやホント、なんて真面目な。このイカれた世界の中でこんな考え方を出来るという事は、もともとの性格が推して知れるというもの。なるべくして生徒会長になったのだろう、この人は。

  

 しかし、ならばどうすれば納得してくれるのだろう。そんなことを考え始めた矢先、


「時に三崎君。昼食は食べましたか?」


 生徒会長がそんな事を言った。


「え? あ、いや、まだですけど。今から購買に行くつもりで」

「でしたら丁度良かった。三崎君、あなたのお弁当もありますので、私と一緒にご飯を食べませんか?」

『えええええええええええええええええ!!!!!!!???????????』


 俺の心を代弁するかのように、クラス全体が大絶叫した。

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