AM11:26

「ほらぁ、使いたい魔術の欄に手を添えて魔力を引き出して、魔術を誰にぶつけたいか想像するだけよぉ? 簡単でしょぉ」


 使いたい魔術っつってもなぁ……文字を読めないし挿絵的なものも一切ないから使いたいもくそもないんだが。まぁいいか、適当で。


 で、手を添えて魔力を引き出す……ルシファーのオーラ的なアレだよな、魔力って。ネクロノミコンも確かにそのオーラ的な何かを感じるし、それを本の中から引っ張り出すイメージ、か?


 で、誰にぶつけたい……真っ先に先輩が浮かんだけど、さすがに後が怖すぎる。かといってギャラリーにぶつけるのも申し訳ないし、とりあえず俺自身にしとこう。


 よし、準備完了……だよな。俺は適当に開いたページに手を添え、オーラを摘み上げるようにして本の中から引き出し、それを俺自身に当てるように祈ってみた。


「さっすが、ネクロノミコンに認められた子ねぇ。一発で発動できちゃうなんてぇ」

 

 興奮気味に言う先輩。一方、俺は全く実感がわかない。魔術、発動したのか? 本から何かが出てきた感じはないけど。


 つーか、やっぱ魔術って詠唱が必須じゃねぇか? 漫画やゲームでいちいち技や魔法の名前を詠唱付きで連呼するのに違和感を覚える事があったけど、こうもサイレントで発動されても反応に困るわ。


 いや、ホントに発動してんのか? ギャラリー達俺から興味をなくしたのか、みんなして空を見上げて……空?


「って、うおおおおお!?」


 遅れて空を見上げて、俺は叫んでいた。


 空から何かが、赤い炎を纏いながら降ってきている。それも猛スピードで。


 俺は確信した。一度も生で見た事なんてないのに、それが〝そう〟だと確信していた。


(い、隕石ぃぃぃぃ!!!)


 そこまで大きくないように見える。が、石ころみたいな大きさの隕石ですらクレーターを作るっていうし、ヤバい事に変わりない。


 ていうかアレ完全に俺の事狙ってるよな軌道からしてそりゃそうか俺が俺自身を目標に定めたんだしじゃあ俺が今から逃げようとしたところであいつは地獄の底までホーミングして来やがるのかHAHAHA笑えないぜ笑わせろちくしょう。

 

「結局死刑なんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 刹那、俺の意識は木端微塵に踏みつぶされた。




 


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