AM8:47
「まぁた派手にやったわねぇ」
「湯川、ってヤツです。さっきベルゼブブに喰われちまって」
「また湯川君~? 色ぉんな悪魔を呼び出してはそのたびに食べられちゃってる子よねぇ。懲りないわ~」
やっぱり〝また〟なのか。しかも、1度や2度どころじゃないっぽいな。
って事は湯川のヤツ、何度も悪魔に喰われたはずなのにさっきまで普通に生きてたって事になるよな。いや……生き返った、か?
って、あの、それってまさか……?
「まぁ愚痴ってたってしょうがないしぃ。とっととやっちゃいましょ~」
「お願いします先輩! 今日も美人! よっ、世界一!」
「やかましいわぁ~」
相も変わらずの気だるげな口調。と、女性が湯川の机に歩み寄る。
その近くにいた俺は、特に何かを言われたわけでもないけれど、その場を離れていた。と、凛がこそこそと俺の傍に来た。
「いやぁ、先輩を呼ぶのとかホント久しぶりだねぇ」
「あ、あぁ。そうだな」
そうなんだ? という本音はとりあえず無視。俺は今混乱してるのだ。
女性こと先輩は、湯川の机の前で立ち止まった。スカートが血で汚れることもいとわず、血だまりの中に手を添えるようにしている。と、
(う、わっ……!)
ごう! と机ごと呑み込むような豪華が火柱のように立ち上がった。
先輩が現れた時の熱気をはるかに上回る熱が、教室を駆け巡る。サウナ、とまではいかないが、じっとしてるだけで汗ばみそうだ。
「……なぁ、凛」
「なぁに?」
「先輩の名前って、なんだっけ」
彼女は間違っても普通の人間ではない。湯川には悪いが、湯川の死よりも先輩の正体が気に掛かった。
まぁ俺の予想が正しければ、何となく名前も想像がつくんだけど、な。
「え? ホントまだ寝惚けてんの? それともドナドナファンタスティックの事がそんなにショックだった?」
と、憐れむように凛。く……いいさ、今は甘んじて受け入れてやるよ。
その間、火柱はどんどん勢いを強めていく。天井に穴を開けるんじゃないかと思えるほどだ。
と、先輩が火柱に向かって静かに言った。
「湯川君~? おはよ~」
やはり、間延びした声。と、凛が俺の横で笑う。
「フェ・ニクス先輩だよ」
やっぱり
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