AM8:45
俺を呼んだのは教室の最後列、
いつものように4、5人で固まって騒いでいたらしく、そいつら全員が俺の方をニヤニヤしながら見ていた。
「ば、バカみたいって……」
そりゃ叫ぶだろ。クラスメイトが悪魔に喰われたんだぞ? まだ血の臭いがぷんぷん充満してるんだぞ?
困惑と共に、怒りの感情が湧き上がる。くそ、どうして俺の方が異常みたいに扱われなきゃならねぇんだ……!
「お前らこそなんでそんな平然としてられるんだ!? おかしいだろうがよ!」
「いやいやいや。遅刻して苛立つとか、それ逆ギレじゃね?」
吠える俺、だけど保手浜は動じない。いや、俺がマジでキレてると捉えてないんだろう。言葉の端々からからかうような語調が感じられる。
他のクラスメイトも俺達のやり取りに気付き、視線を向け始める。くそっ、俺なんかよりも先に気にすべき事があるだろうがよ……!
「遅刻とか関係ねぇしどうでもいい、見ろ! 湯川が死んだんだぞ!?」
「ん? あー、マジだ。気ぃ付かなかった」
湯川の机の惨状を見てもなお、その表情は揺るがない。周りの奴らも口々に何かを言うが、俺の望む反応は返ってこない。
「あ、ホントだー」とか「道理で変な臭いすると思った」とか。どいつもこいつも、湯川の死そのものに全く興味を示しやしない。
と、保手浜が頬杖をついて呑気に言った。
「なぁ三崎。なんで死んだん? 湯川」
「っ……蠅の悪魔に喰われたんだよ!」
やっぱりまだ、少し抵抗はある。悪魔がどうとか、自分の口から言うのは。
でもそれ以上に、俺は保手浜の態度に苛立っていた。
「あぁ、ベルゼブブなぁ。あいつ、また失敗したのかよ」
……ベルゼブブの事は当然のように知ってるのか。それに、また……?
俺の中にかすかに芽生えた疑問。それに当然のごとく気づかない保手浜は、気だるげに立ち上がった。
「ったく、血相変えて怒鳴るから何かと思えば。それならそれでとっとと先輩呼べよな」
「せん、ぱい……?」
「んだよ、遅刻の上に寝惚けてんのか? ま、いいけど」
良く分からないことを言いながら、保手浜は湯川の残骸を横切って教室前の黒板へと歩く。
そして、黒板脇にあるスイッチに指を……ん? なんだあのスイッチ。
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