第153話 3人の地下室
なんでそんなドン引き反応なの?
「…やったことないけど、土を取り除くだけじゃない?そんな難しいのかな?」
「取り除いた土をどこにやるの~?それに適当にやったら崩れちゃうんじゃないの?」
「簡単なのか?オレは魔法はほとんど分かんないからな!」
うーん、土を取り除きつつ崩れないようにしないといけないってとこが難しいよね。取り除いた土は収納に入れておけばいいかな。
あとは訓練できることが条件だから、広くて柱のない空間が欲しい。
「うーん、ちょっとどんな風にしたらいいか考えてみるよ!危ないから少し離れていてくれる?」
「分かった!」
「ユータは大丈夫~?」
「自分の魔法で生き埋めになったりしないよ、大丈夫!」
…たぶんね。とりあえず二人には離れた上でモモについていてもらって安全確保だ。
さてどうしよう?とりあえず地下に下りる道を掘り下げつつ考える。崩れなくて頑丈で柱がない…そうだ!
イメージが決まると、一気に土を動かしていく。余分な土を取り除きつつ、一部を固い石に変化させて地下空洞の内側を覆っていく。床も石の方が丈夫かな?水漏れとかいやだし天井も床もきちっと作っておこう。とにかく頑丈に、中で魔法の練習ができるぐらいに。
「ふー。さすがに疲れた~!」
―ユータすごいの!一人でこんなことできる人間知らないの!
「ありがと!大工さんとかならできるのかもしれないよ?でも自前の魔力だけだとキツイよね~!これだと魔法使っても大丈夫かな?」
―試してみるの!
あっ!?ちょ……
ドゴーーーン!!!
ど派手な爆発と共に一気に押し寄せた爆風で、ちっちゃなオレの体が吹っ飛ばされる。
ま、まあ炎の渦とかじゃなくて良かったかな…オレはくるくると回転すると、叩きつけられる前に壁を蹴って無事に着地。
「もうっ!ラピスー!あぶないでしょ!」
―ここにはユータしかいないの、危なくないの。
オレだって危ないです!それに作ったばっかりの地下室がいきなり破壊されるところだったよ…。もうもうと舞う土煙が収まったところで確認すると、爆発があった部分の壁が崩れているものの、他に被害はなさそうだ。これなら人間の魔法で壊れることはないんじゃないかな?壊れた箇所もオレが手を当てて土魔法を使えば、ほら元通り。なんて便利!
「ユータ!ユータ!!大丈夫か?!」
「何があったの?」
オレを呼ぶ声に見上げると、出入り口にした縦穴の上から二人が顔を覗かせている。
「おーい!なあに?どうしたの?」
オレも二人に手を振ってにこっとする。
「どうしたのじゃねえよ!すごい音がしたから見に来たんだよ!」
「無事で良かったけど何の音だったの~?」
「あー…あれはちょっと…魔法使っても大丈夫か試しただけだよ!」
「お前一体どんな魔法使ったんだよ…。」
「まあそれは置いといて!見て見て~できたよ!」
「見てって言われても~飛び降りるの?上がって来られなくなりそう~。」
そっか、まずは出入り口を整えないとね!
「ちょっと待ってね!階段用意するよ。」
とりあえずざっくりと土の階段を作って二人が下りられるようにする。
「お前…ほんっと器用なヤツだな…何でもありじゃん。」
呆れた顔で下りてくる二人が、地下に広がった空間に今度こそぱっかり口を開けた。
「どう!?この広さがあれば訓練できるでしょう?さっき魔法打って頑丈さも確かめたから大丈夫だよ!」
柱のない頑丈な地下空間、オレが作ったのは……大きなトンネル!アーチ状にすることで強度を上げられるかなって思ったんだ。四角の石造りの部屋でも良かったんだけど、なんとなくカッコイイし!それにイメージしやすくてどんどん伸ばしていけるから広げやすい。側道なんかも作ると楽しいかも。
「お前……この、ホントにデタラメなやつめ~!!」
ぐりぐりぐり!
痛い痛い!なんでぐりぐりするの!拳でオレの頭をぐりぐりするタクトに抗議の声をあげると、今度はラキがオレの柔らかほっぺをむにっと両手で引っ張った。
「いらい!なんでひっぱうの!!」
べしべし叩いて抗議すると、ぱちんと手を離された。
いったーい!なんで?どうして!?
「あり得ねー!お前嘘だろー!!あははは!!」
「ウソだよねー!こんなのってないよ~!わぁ~!」
両手を広げて楽しそうに走り回る二人と、両手でほっぺをもみもみしながら不満たらたらのオレ。
なんだよ…喜んでるんじゃないか。どうしてオレはこんな目に?
『主ぃー!優秀な仲間が帰ってきたぜ!』
あ、チュー助が帰ってきた。そう言えばカロルス様のことをすっかり忘れていた。
「ありがと!どうだった?」
『えーと…カロなんとかが美人に怒られてたけど、あのパパさんにはうまく話を合わせて対応できたと思うぜ!そんでカロなんとかと怖い人が、例の「おじさん」を調べてみるって言ってた!』
うん?カロルス様、またエリーシャ様に怒られたのかな?まあ無事にやり過ごせたようで良かったよ。『おじさん』についても調べてくれるなら心強い。…怖い人って誰だろうね。
「そっか、じゃあひとまず安心だね!チュー助ご苦労様!ラピスもありがとうね!」
『いいってことよ!いつでもこの忠介の兄貴を頼りな!』
おひげをピンと上向きにして腕組みするねずみ。得意満面でふんぞり返る様に、つい両手でわしゃわしゃと撫で繰り回した。
『ちょ、えっ?これ俺様褒められてる?それともいじめられてる??』
うん、両方!柔らかな短毛と温かい体を満足いくまでわしゃわしゃしたら、おひげまでボサボサになったチュー助の毛並みをきれいになでつけてあげる。
『あ、これはいい。うん、これならいい。』
満足気な表情になったチュー助がとすんと人間のようにオレの肩に腰掛けた。ねずみの姿なんだからもっとねずみっぽくしたらいいのに。
二人と一緒に下りてきたモモが、肩に乗ってもにもにと嬉しげに揺れる。
『ここなら誰にも見られないし、私も特訓できるわね!』
「モモも特訓するの??」
ブレスを突き抜けてドラゴンにアッパーカットをたたき込む桃色スライム…いいかもしれない。
『…何考えてるかしらないけどね、多分違うから!私が得意とするのは「守ること」だけよ!他なんてできないんだから。』
「そっかぁ…。でも普通はスライムってシールドも使えないって言ってたよ?」
『そりゃそうでしょ、私は普通じゃないもの。元々の特性を引き継いでいるのよ、私は元々何だった?』
「亀の亀井さん!」
『…いつ聞いてもかわいくないわ。そう、亀よ!シールドは私の甲羅の代わり。簡単よ、私の宿主のあなたならきっと使えるわ。練習しなさい?』
「ホント?!やった!シールドってカッコイイもんね!オレ練習するよ!」
やったやったとぴょんぴょんして喜ぶオレに、駆け回るのを終了したらしい二人が胡乱げな眼差しを送る。
「なんかまたやらかしそうな予感…。」
「最近やらかす頻度が増してるよね~。」
失礼な…とも言いづらいかもね。確かに二人にはもう何もかもバレたって別にいいやって気持ちでいるから、あんまり隠してないもんね。
だって将来一緒に冒険するなら、どうせ色々バラしていかなきゃいけないし!そう、小出しにして慣れてもらってるんだよ!そういうことだよ!…多分。
「ここで特訓か~!オレはもっぱらチュー助と訓練になるのかな?ユータたちは魔法の練習?」
「模擬戦とか必要だったらオレも相手になれるよ!モモがシールドの練習したいらしいから、モモを攻撃するのもアリだって言ってるよ。」
「お前とやったらオレが怪我しそうだ。モモは万が一当たったら…死んじゃったりしない?」
「んーと…大丈夫だって!常にシールド張った上からシールドの練習する?んだって。」
「……なにその無駄に高度な練習……。」
「僕はやっぱり加工の技術を磨きたいな。でも魔力量も増やしたいから魔法の練習もがんばるよ!」
へえ、魔法の練習したら魔力量が増えるのか…運動したら体力が増えるようなものかな?
「そっか~じゃあオレは何しようかな?モモと一緒にシールドの練習と、転移の練習もしたいな!」
「また変なこと言ってる…。」
「それも普通じゃないから…ホントにユータはそういうトコぽんこつなんだから…。」
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