第58話 チル爺に質問しよう!

館に帰ってから、今日の戦果を眺める。

「けっこう集まったね~!きれい!」

「きゅきゅ!」「ピッ!」


小指の先ほどのものから握り拳大まで、各自がきれいだと判断した石がいっぱいだ。半透明の白や緑っぽいものが多いかな。


いそいそと小さいのから手にとって集中集中!とりあえず凹凸をなくしてつるりと丸くしてみる。

「・・おお、結構きれいになるんだ!」

「きゅきゅ!!」

表面がでこぼこしなくなっただけで、結構透明できれいなもんだ。そっか、まずこうやって整えて、本来の色とか透明度を確かめてみるといいかも!他の人が加工するのにもきっと便利だし、これだけでもいい素材になりそうだ。

ぐんっと輝きを増して宝石みたいになる石が楽しくて、次々と加工するうち作業も大分慣れてきた。オレ、土魔法ばっかり使うからそれだけやたらと上達してる気がするよ・・随分細かい事までできるようになってきた。火魔法なんてまだ火をおこすのと火力調整しかできないもん。でも生活に使うにはそれだけできたら充分なんだよね。


「たのしそう!」「きらきら!」「きれ~い、それなあに?」


ふんふ~んと鼻歌を歌いながら作業を続けていると、賑やかな声がした。

お。妖精トリオが来たな!チル爺は復活したのかな・・?


「あーワシ、既に帰りたいんじゃが・・・お主・・何やっとるのかな・・。」

「あ!チル爺!もう大丈夫なの?これはねー、素材になるかなって、ルーのところでひろった石を、きれいにしてるの!」


「・・・・ヒトは器用じゃからの。うん、ヒトはそういう魔法も使えるのじゃろうて。」

「そうなのー!」「ヒトってすごいね!」「わたしもやりたーい!」


「お主らは無理じゃろ。少なくとも細かい魔力調整できるようになったらやってみい。」

「それむりー!」「ドバーッとやるほうがいいの!」「むずかしいー。」


「妖精ってホントにこまかい魔法がにがてなんだね。」

「・・・・・・まあ、お主のは・・・細かいの限度を超えてる気が・・・まあよいわ。・・ワシには関係ないもん。」


なんだかチル爺が投げやりな気がする。

あ・・そうだ、この際色々聞いておかないと!


「ねえチル爺、魔法のこととか色々教えて!前にね、回復薬に魔力を通したら光ったんだよ!それって何?そのおかげで大けがが治ったみたいなんだけど・・。」

「・・・そりゃ回復薬は魔法薬じゃからのう。薬草程度の効果しかないものにお主の回復を込めた魔力を添付すれば強化されるじゃろうて。魔法を添付するのは・・ヒトは付与魔法と言っておったの。それ専門の者がいるくらいじゃ、コツがいるから誰でも出来るワケでないがの・・。回復の魔力を添付できる者となると・・おるのかの?・・・まあよいか。」


「添付・・付与・・・そっか、だから魔石に魔法を付与することもできたんだね!だってオレ、もともと魔力通すの最初にやってたから・・だからコツを知ってるんじゃないの?」

「じゃからそのコツを知ってるのがおかしいがの。まあおぬしはそもそもおかしいからの、そういうことじゃ。」

いったい何がそういうことなのかさっぱり分からないけど、まあいいか。


「あとね、ラピスのこと教えてほしいな!」

「きゅ?」


呼ばれた?とぽんっとラピスが現われた。ラピスは自由にお出かけできるから、オレが館にいる間は代わりに色々な場所へ行って見聞を広めてもらっているんだ。フェアリーサークルでの行動範囲も広げたいしね。聖域に仲間がいるだろうし、アリスもいるから、そっちにもマメに帰ってもらってるよ。心配症なラピスはこうやってすぐに帰ってきちゃうけど。


「!!ら、ラピス様、ご機嫌麗しゅう・・。」

「・・ぎゅぅ。」

それいや!と、げっそりした顔をしている。


「ラピスは普通にしてほしいみたいだよ?」

「ほんと?わーい!」「ラピスさまー!遊ぼう!」「ふつうにしていいのー?!」

「きゅきゅ!」

「ふ・・ふつうに・・」

喜んだ妖精トリオとラピスが鞠のようにぽんぽん跳ねててとてもかわいい。チル爺はまだ葛藤しているようだ。

「ラピスは・・・天狐は妖精のところでは神様なの?」

「・・・ヒトの言う神様・・とは違うかもしれんの。そこに実際おわすのを知っておるからの。天狐様は普通聖域にしかおらんから、ワシらが姿を拝見することはないのじゃ。ただ、妖精界は東方聖域、と呼ばれる場所と接しておる。そこの守護をされておるのが天狐様じゃ・・天狐様と言えばその方なのじゃが、たくさんおられるようじゃの?守護の任にあたっておるのがジュリアルス様という天狐様のようじゃ。」

「そうなんだ・・でも、どうして妖精が天狐のジュリアルス様を崇めるの?」

「そりゃあ天狐様じゃからの!ヒトも神や精霊を崇めるじゃろう?天狐様は聖域の象徴じゃ・・妖精界は聖域からの力の恩恵を受けて存在する場所じゃ。今おるこの場所と聖域の間の存在が妖精界じゃ。聖域は神の域、神獣様や精霊様の住まう場所。ワシらは言わば一段下の存在じゃからの、憧れるのは当然じゃろうて。」

そうなんだ・・じゃあ、ヒトとか動物は2段ぐらい下の存在になるんじゃないかな?聖域に行けるラピスってすごいんだな~!


「きゅきゅ!」

ジュリアルスは変わってるの、動くのが嫌いだからずっとそこにいていいって言われて喜んで守護してるの。そこにいるだけで美味しいものを持ってきてもらったりいろんなお世話してくれるから、ずっとこうしてたいって言うの。おかしいよね?


そ、そう・・結構怠惰な性格の天狐様なんだね・・それはあまり妖精達に言えないね。

「天狐とか神獣っていっぱいいるの?ルーは森にいたけど・・みんな聖域にいるの?」

「・・・ルー?・・いや、ワシは何も聞かなかった。・・・そうじゃの、天狐様は普通聖域にしかおらんようじゃ。数は・・その辺はラピス様が詳しかろう。神獣様は、色々じゃ。たくさんはおらんぞ・・何せ、この世界の最初に存在したと言われる者の末裔じゃからの。」


「どういうこと?」

「神がこの世界をお作りになったときに、その手伝いをしたのが神獣と言われておる。いや、その手伝いをしたから神獣となったと言うべきか。竜・鳥・獣・魚の中で数種類ずついると言われておるよ。ああ、竜は1種で神の時代から変わっておらぬ。他は種族を変えつつ引き継がれておるな。」


「そうなんだ・・・すごいお話・・・。チル爺、物知り!」

「そうじゃろ、ワシも長く生きておるからの。」


「チル爺はいくつなの?」

「そうさのぉ・・・480年ぐらいじゃないかの?」


「よんっ?!ええっ!!妖精ってそんなに長生きなの?!」

「そうじゃよ?ばーさんなんか530年ぐらいじゃなかったかのう?」


「あ、かってにいうとおこられるー!」「まだ300さいっていってたよ!」「チルじいしーらない!」

「ま、待てっ!何もばーさんに言うことなかろう?!」


・・・いくつになっても女性は女性なんだね・・・230年もサバ読むって・・もはや年齢なんてあってもなくても一緒な気がするよ。それにしても数百年の寿命か・・・どんな感覚なんだろうね。


「アルアは35さいー!」「ミルミルは33さい!」「イナナは・・35さいぐらい!」

げ!妖精トリオ・・・オレよりはるかに年上だった・・・むしろ地球にいたオレの方が歳が近いよ。そして今みんなの名前初めて知ったよ・・でも見分けつくかなぁ・・。纏う光が赤っぽいアルア、緑っぽいミルミル、黄色っぽいイナナ。まぁ・・いつも一緒にいるから見分ける意味もあんまりない気がするけど。


「え・・みんなそんなに年上なんだ・・・オレ、まだ3歳だよ・・」

「3さい!」「すごい!うまれたて?」「まだタネじゃないの?」

「妖精ってタネから生まれるの・・?」

「うーむ、そうとも違うとも言えるの。妖精が生まれる資質のある花が咲くと、妖精が生まれるのじゃ。タネの時点で妖精と言えるのかどうかじゃのう。」


そうなんだ・・・妖精ってすごく不思議な存在なんだね・・!想像がつかないや・・。


「あ、生まれると言えば・・前に聞こうと思ってたけどフェリティアって鳥になるの?」

「ぐふぅ・・聞かなかったことにしておったのに・・・」


チル爺が膝をついた。






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