第15話 出張魔法教室2
「・・・まあ、ぬしが普通の妖精とは違うことがよく分かったわい。」
チル爺、オレそもそも妖精じゃないから。
「人の子はこんなスムーズに魔法に取り組むもんじゃったかのぅ・・?まあよいわ。ぬしのような白黒の人の子は見たことないでの、このへんの人の子と種類が違うかもしれんの。」
まるで犬猫みたいな言われようだ・・でもファンタジーだし人の種類も色々あるのかもね!
「きょうは 何をするの?」
「そこまで魔力操作ができれば、もう魔法を使うだけじゃ。ときに、ぬしは外へは行かんのかのぅ?」
「おそと・・行きたいんだけど、あぶないからダメなんだって。」
「まぁ・・室内よりは危なかろうなぁ。難儀なことだの・・室内でできるようなものは・・このぐらいかの。」
チル爺が杖をかざすと、ふわっと風が吹いた。ま・・魔法だー!!
「うわあ~すごい!チル爺!どうやるの??」
「明かりと同じじゃよ。起こしたい規模の魔力を集めたり、操作して魔法を引き起こすのじゃ。どのぐらい集めるかは、感覚でつかむしかないの。ただし!ぬしは小規模を意識してやることじゃ!!」
絶対じゃぞ!?と念を押されたけど、振りじゃないよね?オレだって、いきなり部屋の中で突風が吹いたら困るもん、やらないよ?せっかく最近大人しくしてるんだから。
マリーさんに怒られることはしない、と思ったところで、以前注意を受けたことを思い出した。魔法が使える嬉しさに、すっかり忘れていたオレ・・。
「チル爺!まえにね、まほうをべんきょうしたいって言ったら、ばくはつしたり ぎゃくりゅうするからダメって言われたの。これは、だいじょうぶ?」
「爆発・・まぁ・・そうじゃのう、バカみたいに魔力を集めて火炎を放てば爆発するやもしれんのぅ。逆流なぞ見たことないが・・逆流するとして何が問題なのじゃ?」
「こおりづけになったり、体がいわになったりするって・・。」
「なんじゃそれは?・・・・ああ、そうじゃの、ぬしはヒトであったの。ヒトの魔法だと可能性はあるかのぅ。ワシらの使う魔法ではあり得んぞ。そもそも逆流しても大気に戻るだけじゃろうて。」
あ、そうか・・大気から集めた魔力が逆流したって大気に戻るもんね!周りが凍ったりはするのかもしれないけど・・。それって。こっそり魔法練習しても危なくないってことじゃない・・?こないだの点滴魔法(仮)みたいに危なくないものだったら、いくらでも練習できるんじゃない??
ここからオレの魔法生活が始まる・・!
「ひとのこ、かおがわるいこ!」「いたずらしたらダメなんだよ!」「メッ!だよ!」
いいことに気がついたと、密かにグフフとやってたら、妖精達にダメ出しされた。2歳児はすぐに顔に出るから困っちゃうな。
さて、気を取り直して魔法の練習に取りかかろう。
魔力をすこーし集めて・・うちわで軽く仰ぐ程度の風を思い浮かべる。
ふわっ・・。
できた!できたよね?!
チル爺を振り返ると、頷いた。若干諦めたような顔をしているけど、そんな些細なこと気にしない。
「できたーー!」
喜びの舞!イルミネーションバージョン!!
「ひとのこ、はやーい」「おいつかれちゃうー」「どうしてそんなすぐできるのー?」
妖精はどうも想像が苦手らしく、どうしても普段体感している自然現象を再現しようとするため、規模が大きくなりがちなんだそうな。規模が大きいと、当然多量の魔力操作が必要なので、結果的に発動できずに苦労するらしい。その代わり、十分な魔力を操作できるレベルになれば、大規模な現象を動かせる強力な魔法を操るのだそうな。
妖精達は『小さな魔法』を操る訓練をしている。魔力操作さえ習熟できれば大規模にできるのだから、とにかく使うことが大切なんだって。
「ちいさいかぜーちいさいかぜー。」
ぶつぶつと呟きながら放った風は、ビュウと吹き抜けてオレの髪を乱した。
「いまのは ちいさかったよ!ね?ね?」
今ので小さかったのか・・これより大きな風を室内で吹かせられたら困るんですけど・・。
「まだまだじゃ!そよ風じゃと言うておろうが。」
「火ならできるもんー!」
いや、火はやめてください。・・これ以上妖精が室内で魔法を使うのは危険な予感がビンビンする。目線でチル爺に訴えかけると、分かっておると頷いた。
「ほれ、そろそろ帰ろうかのぅ。お前達にはもっと練習が必要じゃな。これから障壁のあるところで練習じゃ。早うせんと、ユータに追い抜かれるぞ。」
そう言われると、悔しかったのか素直に従うちびっこ妖精たち。
「ちょっとまっててねー!」「5ねんか10ねんしたらきっとできるんだから!」「またねー!」
「ぬしは何事も、ほどほどにするのじゃぞ!よいな!」
5年か10年って・・大分差がある上にやたら先の話だな。妖精は時間の感覚が甘いのかもね。そうなると次に会えるのはいつになるやら。
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