40.
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「ほぉ~、そちらの子ですね。失礼、お手を拝借」
レコアンブルでは数少ない奴隷商店、そこの店主は身なりの綺麗で立派なひげまで生やしている男。奴隷商は数が少ないのは立ち上げから奴隷の入荷、質の管理、顧客の獲得を継続して行う為の力がないからで、逆に継続していく力、資金があるのなら長期的には十分に利益を出し続けることが出来る商売らしい。
だからこそ、こいつもご立派な店構えをし、綺麗な服を着ている。
顧客での接客と、奴隷の鑑定、買い取り等は別の部屋を使っているらしく、今は鑑定等を行う部屋にて対応されている。
「ふ~む、あの国が管理している奴隷の印ですね。ふむふむ、商人が魔獣に襲われて、死亡していたので、保護をされていたと言うことですね。では、これより商人の死亡の確認、人為的目的がないかの確認、この奴隷が逃亡を図っていたか等の調査を行わせていただく為に多少時間を頂くと思いますので、ご報告を含めて2日後の夕方頃にでも再度こちらにいらっしてください」
「2日後だな、その後はどうなるんだ?」
「結果次第ですが、元の場所に戻すか、こちらでどうにかするかというぐらいですかね? それまでこちらで預かっておきましょうか? その方があなた方も都合が宜しいのではないでしょうか?」
傷だらけで顔の隠した子どもの奴隷を連れている冒険者なんて。
どんな風に見らるかわかるだろ? と男はニタリと笑いながら続け様に
「それと宜しければうちの商品を見て行きませんか? 僭越ながら奴隷などは飼われたことがないと推測させて頂きましたので是非この機会に私どもの商品は如何でしょうか。 活きの良い奴隷、戦闘に向く奴隷、男性用や女性用の奴隷、家事や労働力になる奴隷など幅広く取り揃えておりますので」
俺とミーシャは2日間の調べている間、こちらで預かることは出来ないかと聞いた所、問題はないが、もし街中で質問された場合、俺たちの『所有物』だという証明が恐らく出来ないので、責任は持てない事を言われたもの「大丈夫だ、こいつはこっちで預かっておく」として奴隷商店を後にした。
この日の食事は、多少アオに街を慣れて貰う為にも歩きながら露店で買い食いや、持ち帰りを行い、普段生活していた宿に戻る。がそこでも問題が1つ発生した。
まずは、店主や客の視線。
傷だらけの子どもの奴隷を連れて帰ってきているんだからそれは仕方ない。
そして、部屋の問題。
泊まっている宿は2人用までの部屋の大きさしかなくベットも2つ、3人がベットで寝るには別の部屋を取らないといけない。
部屋は余っているようだが、余分な金の出費は確かに痛い。
「なら俺だけ別の所に泊まるから、明日は自由行動にするか」
「え~、別に3人一緒でもいいんじゃないかな? ね? アオ?」
「……ゆかで、いい…………です」
どうするか悩んでいると店主がアオの言葉を聞いて「確かにそうだな、兄ちゃんたちは常連になってくれてるし、同じ部屋でいいなら追加はしないでやるよ」という言葉によって結局は3人同じ部屋で泊まる事になった。
部屋に入って荷物を置いているとアオは早々に部屋の隅の方にいき、チョコンと座ってしまう。
「おいアオ、何してんだ」
「……ねて、いい……です、か?」
「疲れちゃったんだね~、でもそんな所で寝たらダメだよ~」
「ほれアオ、もっと食っとけ」
露店で買ってきた食べ物を差し出すようにし、おびき寄せる。
アオは、あれからしっかりと食事を取っている。
あまり食べれなかった環境のせいなのか、子どもだからなのか量はあの晩のように2人前を食べる、なんて風にはならないが、1人前ならしっかり食っているため、たった数日でも顔色が良くなって見える。
「ぁ……」お腹がなったのかお腹を押さえながらゆっくりと立ち上がり、受け取るアオ。
「食べ終わったらアオとお風呂いってくる~、んでと、どうしよっか?」
「どうするって何を?」
「ベットは2つでしょ? どうわける?」
「どうってそりゃ」
ミーシャとアオが一緒になるんじゃねぇのかよ。
別にアオも子どもでかなり小さいから俺と一緒でもそんなに幅は取らないからいいけど。
「お兄ちゃんとたまには一緒に寝ようかな?えへへ」
完全にからかってきてるな。
そっちがその気なら俺も乗ってやる。
「んだよ、寂しいのか妹よ。俺は別にいいぞ」
「え~、反応薄いよ~。こんな可愛い妹がお兄ちゃんと一緒にって言ってるんだよ~? 普通ならもっと喜ぶ所じゃないかな~」
「自分で可愛いとか言ってんじゃねぇよ。さっさと風呂いってこいって」
「は~い! アオ~、食べ終わったら一緒にお風呂いくよ~」
結局ベットはミーシャとアオ、俺は一人ってので落ち着いた。
布団を被り、目を閉じてしばらくするとぼそっと「お兄ちゃん、起きてる?」と聞こえてきたのでこちらも小さく「ん」とだけ返事をする。
「アオの事、どうなるのかな?」
「明後日なったらわかんだから、それまでは考えなくていいだろ。もし連れ戻されることになったら……そん時はそん時だ」
「……ぅ……ん、そうだよね。でも、私は……どうにかしてあげたい……な」
ミーシャは眠りそうになっているのか徐々に声が小さくなっていく。
「まぁ、最終的に俺もアオの事に賛成しちまったからな。明日はもっと色々案内してやろうぜ」
「ん……おにいちゃ……」
「どうした?」
「ありが、と……ね……」
そのまま先に眠っていたアオの小さな寝息にミーシャが加わるように眠りに落ちていく。
まだお礼を言われるのは早い気がするが、それでも俺は「ん」とだけ返事をしておいた。
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