33.
村につくまであれこれとミーシャはアオに対して質問をしていたが、返答は曖昧で「今いくつなの?」「…………10ぐら、い?」、「これまではどこにいたの?」「…………知らない」、「好きな食べ物は?」「……好き、な……?」といった会話が幾度か繰り返されていた。
近くにあった村に到着し、さっそく宿に向かう。
冒険者2人が汚れた奴隷を連れて歩いている。
村の人からすればそれだけ。
興味ありげに見てくるものもいれば、なんとも思っていない者。
はたから見たら奴隷を酷い扱いをしている冒険者にも見えるんだろうな。
宿屋について部屋を取る。
料金はしっかり3人分。
「さっそく治して上げたらいいかな?」
「…………」
村にも無事到着したので魔法を使って魔力が減っても問題ないが、先にやっておかないといけない事がある。
「いや、その前に」
場所は浴室に変わる。
いるのは俺とアオの二人。
ミーシャには買い物を頼んだ。
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「その前に、アオを風呂にいれねぇと。結構臭ってるだろ」
「…………」
数日ろくに風呂に入っていないそんな臭い。
「服ってか、この布も相当臭いが染みついてるし、ミーシャはアオに着れそうな服を適当に買ってきてくれ。その間に風呂場で洗ってくるわ」
「んー、了解! それにお腹も空いてきたもんね~、ご飯も頼んでおくよ~」
「あぁ、任せた」
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といった具合で宿屋の浴場を借り、脱衣所にいる。
「ほら、さっさと脱げ」
「…………」
アオは背中を向けながら返事はしないものの、ゆっくりとローブのような服を脱いでいく。
中には何も着ておらず、素肌が見えるが、かなり酷い。
やせ細っており、皮膚には骨が浮き出ているのは先程まで腕と顔を見た感じで食事も十分に与えられていなかった事は分かっていたが、背中側だけでも赤く腫れた箇所、青く変色している肌がそこらじゅうにありながら、さらに皮膚を焼かれたような痛々しい傷が大なり小なりと見えてしまう。
奴隷を『者』として扱うか『物』として扱うか。
脱衣所にて汚れていたローブを籠に入れ「いくぞ」と。
俺は後で普通に風呂に入るつもりなので、アオの臭いがしっかり取ることが先決。適当に切られてしまっている頭に手を置き、浴場に行くように軽く押す。力を少し入れると簡単に折れてしまいそうなほど弱々しい体。
風呂場は、湯のおかげで湯気が立っているのだが、アオはそれを見てなかなかと進もうとしない。
「どうしたんだよ?」
「……お、風呂?」
「だから風呂だっていってんだろ?」
「……これ、なに?」
「これってなんだよ、湯気の事か?」
「……暖かいもの、の、近くで、……出るや、つ?」
「以外になんかあるのか?」
「……こんな、いっぱい……はじめて」
「……そっか」
ゆっくりと湯を浴びる様にいってもなかなか行動に移そうともしなかったので、桶に湯を入れて頭の上からかけると「あっ」と驚いた声を出すアオ。
ゆっくりさせるのはいいが、いつまで経っても自分じゃ洗ってくれそうになかったので髪の毛、そして背中は洗ってやる。
背中を洗う際、自分じゃ効果があまり期待できないのは分かった上で【かの者に癒やしを与えたまえ】回復魔法をかけながら、力を強く入れすぎない様にしながら、それでも汚れは取れるようにしっかりと流す。
一通り終わると湯船に浸かるように言うが「……?」と不思議そうにしていたのでつかみ上げ、足からゆっくりと投入する。
「ぁ……、ぁっ……ぃ?」
「熱くて気持ちいだろ、傷が痛むなら無理すんなよ、とりあえず100ぐらい数えたら出てこい」
「……ひゃ、く」
「そういう意味じゃねぇ、痛くないならもう俺が良いって言うまで出てくんな」
湯船に浸からせて少し経つ頃、浴室の扉が開く。
「お兄ちゃーん、買ってきたよ-? ご飯も頼んで置いたから、もうすぐできるってさー!」
「わかった、そろそろこっちも出るところだから置いててくれ」
「はーぃ!」
「あっちぃな、そろそろアオも出てきていいぞ」
風呂にしては少し早いかもしれないが、臭いは十分取れただろうし、服も届いた。
十分湯船も堪能できたろうと返事を待つが帰ってこない。
視線を送ったところ、湯船に顔をつけそうなところでコクリコクリと首が微かに動いていたので「おいこら、風呂の中で寝るんじゃねぇ」と引っ張り上げる。
「……ん」
引っ張り上げると小さな吐息をたて目を開けるが意識が曖昧。
前は背中などに比べて怪我はまだ、少しばかりマシ。
それでも少しばかり。
焼け跡はよっぽど効果高い回復魔法が使えないと殆ど治せねぇだろうな。
少しは目を醒ますように風の魔法を顔にかけながら髪の毛を乾かす。
そして服を着させようやく自分達の部屋に向かう。
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