第6話 近寄らないで

「相変わらずカフェのイベントメニューって高いよな」


「わかってないねお兄ちゃん。これは付属品が本体なんだよ、料理はおまけ」


 こころが行きたがっていたカフェを発ってから少し歩き、俺達は秋葉原の中央通りを進んでいた。


「まぁいいけど。で?次どうする?」


「ゲーセン行こゲーセン!なんか二人でできるやつやりたい!」


「おー、いいじゃん。つってもゲーセンなんか無数にあるぞ」


「どこでもいいよ。私達そこまで詳しくないし」


「それもそうだな」


 ***


「さ、お兄ちゃん。プリクラ撮ろ?」


 ゲーセンに入っていきなり俺はずっこけた。


 さっきと言ってることが違うじゃないか。


「え、ヤダ」


「なーんーでー!」


「周りにカップルだと思われたくない。大体撮ったやつどうするんだよ…」


「それはもちろん、お兄ちゃん写真集…じゃない。財布とかに入れておく」


「今聞き捨てならないワードが聞こえたんだけど。写真集って何。怖いんだけど。俺ヤダよ。妹のノート開いたら俺の写真びっしり貼ってあるとか。狂気を感じるんだけど」


「…………ヤダナー。ワタシガソンナコトスルワケナイジャナイ」


「今の間とその片言なセリフは何!?え、マジでそんなのあるの…?」


「いや、本当にそれはないけど…」


「けど?」


「…私とお兄ちゃんのツーショット写真は、机の引き出しにいっぱい入ってる」


「………」


 どうしよう、今の一言で妹が一気に怖くなってしまった。


「高瀬さん、その、近寄らないでもらえますか?」


 俺は繋いでいた手を離して、こころから距離をとる。


「お、お兄ちゃ~ん…」


「いやだってお前…ストーカーかよ…」


「引かないでよ~」


「そんな事実知りたくなかったよ…。俺はこれからどんな態度でお前に接すればいいんだ…?」


「うぅ…。なんか、その、ごめんね…?」


 柄にもなくしゅんとした様子で謝るこころ。


「…全く、仕方ないな」


「お兄ちゃん?」


「そんな顔するな、せっかくのデートが台無しになるぞ?プリクラだっけか?わかったよ。撮ってやるよ」


「…!」


 ぱぁっと一瞬で表情が明るくなった。


 全く、どこまでも俺はこいつには甘いな。


「ありがとう、お兄ちゃん!大好き!」


「そういうのあんまり大きな声で言うな。恥ずかしい」


「えへへ~」


 そして離していた手を繋ぎなおして、俺たちはゲーセンを満喫するのだった。

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