幕間 ~バーグさんとの再会?~

『関川さん、ちょっと大事な話があります』


 と、担当の坂東さんから連絡を受けたのが昨日のコト。

 なにやらただならぬ雰囲気というか、嫌な予感しかしない。

 どんな内容なのか聞いてみたのだが、電話では話せない、直接会って話しますの一点張り。


 ということで、なんとも暗い雰囲気で指定の喫茶店に行った。

 ちなみにその喫茶店には何度か足を運んでいて、前話のモデルにもなったイングリッシュガーデンのある喫茶店である。


 お昼前の11時、到着するとすでに彼女が待っていた。

 すぐに彼女と分かったのは、向こうから手を振ってくれたからだ。

 担当編集者『坂東・A・俱美』さん。


 そう、私の目的はもう一つあった。

 ひょっとしたら彼女があの日に消えてしまったバーグさんなのではないかと。


「お会いするのは初めてですね、関川先生」

「そうですね、初めまして坂東さん。私が関川です。いつもお世話になっております」


 テーブルの向こうにいる彼女、一目見てバーグさんでないことは分かった。

 なんというか、かなり筋肉質。

 雰囲気はとても可愛らしいのだが、格闘技でもやっていたように体つきがとにかく大きい。

 やはり外人さんの血が入っているのだろう、見事な金髪で鼻も高い。


 正直に言えば彼女がバーグさんじゃなかったことにちょっとがっかりした。

 でもそれは彼女のせいじゃない。

 勝手に妄想していたこちらが悪いのだ。


 でも……坂東・A・俱美……頭文字をつなげると『バアグ』になるし、これはひょっとしたらと思うよね?

 これはもう伏線だと思うよね?

 すごく思わせぶりなネーミングだったよね?


 それでもまぁ私が悪い。

  

「前回の話、見事に混乱してましたね……」

 彼女はにっこりと笑ってそう言った。


 それはなんとも人好きのするいい笑顔だ。

 彼女がバーグさんでなくても、私は彼女自身がいっぺんに好きになる。


「すみません。さすがにいいアイデアが思いつかなくて」

「まぁそう言う時もありますよ。で、いよいよ最後のお題です」


「はい。今度はどんなムチャが?」

「ふふ。次はですね『どんでん返し』です」


「意外とシンプルですね」

「でしょう? 実はコレはあたしのアイデアなんです! 初めて採用されたんです」


「なるほど。今までで一番書きやすいかも」

「でしょう。そう言ってもらえてうれしいです」


 彼女はニコニコとしてクリームソーダのストローに口をつけた。


 ふむ。これはちょっとよく考えてみよう。

 ラストだし、ちょっと気合いを入れてみよう。 


「……そういえば、大事な話ってお題のことだったんですか?」

 切り出したのは私。

 そのくらいの話だったら、電話で済みそうなものだろう。


「あ。そうでした。もう一つあります。関川先生、納税の準備は大丈夫ですか?」

「納税? つまり税金ってこと?」


「ええ。先生、急に収入が増えたでしょう? かなり来ると思いますよ税金」

「そうなの?」

「たぶん何千万って感じで」


 ……え。

 ナンゼンマン?

 お金ないよ。マンション買ったし、車も買ったし、現金はほとんど残ってない。


 まずいな。

 かなりまずいな。

 どうしよう?

 まったくいいアイデアが思い浮かばない。


、ははは」 


 ……私としてはそう言うのが精いっぱいだった





 もはや些細なことだが、次に書き上げた話は『どんでん返しとその先にあるもの』である

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