15 鈍感馬鹿野郎の真相
それからしばらくして、俺達はグレンの工房兼自宅を出た。
結局グレンは工房を出るまではずっとあんな調子で、俺達の前でおかしな反応を取り続けていた。
だから工房を出てすぐにグレンに問いかける事にした。
……問いかけてまともな答えが返ってくるかは分からないけれど。
「なあ、グレン。ちょっといいか?」
「なんだ? ……なんて言わねえよ。お前らが今改まって聞きたい事が何か位は理解してるつもりだ」
この展開を予想していたという風な様子でそう言ったグレンは言う。
「俺がどうしてあの露骨に奇想天外な事が起きている空間で素っ頓狂な言動ばかりしてたか……みたいな話だろ?」
「え? なんすか……自覚してたんすか?」
「ボク完全に心に何か悪い影響でも与えてるのかなって思ってましたよ」
「そんな精神乗っ取られるみてえな悪影響はねえよ。起きてることは自覚してるし全部演技だ演技」
「成程……演技、ね」
ひとまずグレンが心身共に無事なようで、それは安心する。
……まああの誰かは心身ぶっ壊すような悪い奴には見えないから、心配するだけ野暮な話なんだけど。
でも……だからこそだ。
「でもなんでそんな演技してたんだ? いや……俺らも最初は粗相が有ったらやべえって思って演技してたけどさ、正直あの……なんだろ。幽霊? 全くお前に害与えたりしてねえだろ。なのにお前まであんな気付かないフリみたいな演技しなくても……」
「確かにな。工房の中に居る誰か……まあ妥当な説を上げるとすりゃ俺の前に居た奴の霊だろうな。殺人事件があったって話だし、未練でも残ってんだろ」
殺人事件……そういや、そういう類いの事故物件だったな。
そしてグレンは続ける。
「で、そいつが別に悪霊じゃねえって事は分かってる。まあ思える訳ねえよな……それはなんとなく俺だって分かるよ」
「だったらなんで……それこそ演技してたら失礼じゃねえか?」
「ごもっとも……まあ正直礼言わないといけねえ立場なんじゃねえかなって思う。だけどよ……」
そしてグレンは一拍空けてから言う。
「幽霊とか余裕余裕って思ってたけど実際遭遇して分かった……俺、心霊現象の類いマジで無理っぽいんだわ。こ、このままどんどんお近付きになるの怖いから……気付かねえフリしてんだ」
そういうグレンの表情はどこか青ざめている。
多分マジでそんな感じなのだろう。
とりあえず納得。
しかしグレンにそんな弱点が……よし、夏に騙して肝試し連れて行こう。
「ちなみになんすけど、グレンさんはま前々から幽霊が居る事を知ってたんすよね?」
「ま、まあ住んでるからな」
「私達にそれ内緒で連れてったって事は……これ完全に私達驚かせるつもりだったっすよね?」
「……ノーコメントで」
「「「……」」」
騙して肝試し連れてったろ!
ちなみに後で聞いたらアリサもリーナも同意見だった。
夏が楽しみだなぁ!
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