6 色々と心配になりますね 上

「あ、どもども」


 グレンはルークとシドさんに軽く会釈しながら俺の方へ歩み寄ってくる。

 そう言えばグレンはこの二人と面識ねえのか。

 だがルークやシドさんは昨日からの雑談の中で、グレンという俺の親友が新しくパーティー入っている事は知っている訳で、俺が改めて紹介する前にシドさんが話しかける。


「キミがグレン君かい」


「あ、もしかしてクルージから話きいてました?」


 突然名前を呼ばれて驚いたようにそう言うグレンに、シドさんは笑みを浮かべて言う。


「うん、聞いてる。クルージ君のパーティーに入ったんだってね」


「そうですね……ってもしかしてあなたも冒険者だったりするんですか?」


「グレン、この人王都の冒険者でトップクラスに凄い人」


「え、マジで!?」


「マジでマジで」


「いやいや、僕なんてまだまだ……っと、そうだ自己紹介自己紹介。僕はシド。どうぞよろしく」


「あ、どうも、グレンです。こちらこそよろしくお願いします」


 そう言って互いに軽く頭を下げあうグレンとシドさん。


「あとこっちの奴もトップクラスって言っても差し支えない位凄い冒険者の魔術師」


「どうも、すごい魔術師です。ルークって言います。よろしくおねがいします」


「あ、こちらこそどうも」


 そしてそちらの挨拶も終わった所でグレンが言う。


「クルージ……お前なんか凄い空間にいるんだな」


「まあな……」


 色々と凄い人達だよ。

 ……色々と


「ああ、そうだ。とりあえず立ち話もアレだろ。座れよグレン」


「おう、そうさせてもらうわ」


 そう言ってグレンが椅子に腰掛けたところで、シドさんが言う。


「ところでキミは刀鍛冶を目指しているそうじゃないか」


「あ、はい、そうですけど……ってクルージ、お前そんな事まで話してんのか?」


「ああ、話した」


「いずれナンバーワンの刀匠になる男だって言ってましたね」


「お、お前そんな事まで話してんのか……?」


「ああ、話した」


「お前さぁ……いや、まあいいや。なるし」


 少し恥ずかしそうにグレンはそう言う。

 なんか悪い事したかもしれない。

 ……まあどう考えたって虚言にはならないし。

 後まあ少し親友の事を自慢したかった訳だから……その、なんというか、許してほしい。


 そしてそんなグレンにルークが言う。


「でも大変ですね。引っ越してきたばかりで物件探しとかしなくちゃいけないんでしょう?」


「……っと、そうだ。今日は見舞いついでに報告があったんだ」


 ルークの言葉で思い出したようにそう言ったグレンは、どこか勝ち誇った表情で言う。


「住居の方はまだなんだけどよ……工房の方、午前中の内に良さげな物件決めてきた」


「……は?」


「……なんだよその反応」


「いや、だってお前……早くね?」


 昨日の今日じゃん。


 ……なんか本人とても勝ち誇った表情を浮かべているけど、すげえ不安になってきたんだけど。

 グレン……お前、一体どんな物件決めてきやがったんだ?


「まあ確かに早いが、善は急げって言うだろ」


「いや、言うけど……」


 ……分かってる。この話は掘り下げないといけない。

 素直に良かったじゃんなんて、平和な感じで終わらせられない。


 だけど……もう、本当に。

 この話掘り下げるの怖いんだけど!?

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