#22 漆黒の粒子砲
良かった、ミアは落ち着いたみたいだ。
俺がミアから離れようとした、その時、ミルクの声が夜空に響き渡る!
「はっ! いけないシロさま避けてっ!」
その瞬間、俺の背中に灼けるような熱さと激痛がはしる!
「がぁっ!? ゔっ……後ろから?」
背中が灼けるように熱い。
攻撃魔法でも撃たれたのか? 誰に!?
すぐさま俺の元へミルクが飛び帰ってきては奇襲を仕掛けた相手の情報をタブレットに映し出す。
「シロさま! すぐに回復をっ! 相手は……
ゴッドゲームのプレイヤー、
黒のプレイヤー、【ネロ】です!」
俺はメガヒールで自身のダメージを回復させ、そのままミアに【ライトシールド】を発動した。
ライトシールドは対象を光の壁で覆いダメージを無効化させる補助魔法の一つだ。
ミアが光に覆われたのを確認して、俺は振り返る。確かにそこには妖精を連れたゴッドゲームのプレイヤーが立っていた。
「お前は……」
あの時の根暗野郎か。……黒。
まさかコイツもゴッドゲームをクリアして望みを叶えようって腹か? それで邪魔な他プレイヤーを始末しようって魂胆かな。
目の前の男は黒い薄手のロングコートに身を包みじっと佇む。長い前髪が一瞬、フワッと風になびいたと同時に、後方に無数の魔法陣が現れた。
漆黒の魔法陣は瞬く間にその数を増やして俺の視界を埋め尽くしてしまった。
「シロさまシロさまっ! 危険ですっ!」
「くっ……そ、何だアレは!?」
俺は後方のミアを確認、今俺があの技を避ければライトシールドがあるにしろミアに直撃してしまう……何とか捌くしかない、か。
男はそこからピクリとも動かない。
だが次の瞬間、俺の左肩を何かが撃ち抜く。
黒い……ビーム……? 痛っ……
「ゔぁぁっ!?」
貫通した粒子砲は後方のミアのすぐ横を通り抜けていく。その後、間髪いれず俺の右太腿を同じ痛みが襲った。
二発目が照射されたのか? まさか、あの無数の魔法陣全てからこれを放てるのか?
そんな嫌な予感ほどよく当たる。
案の定、一斉に放たれた漆黒の粒子砲は俺を貫かんと迫る!
「ライトウォール!」
俺は光の壁を作りそれを防ぐ。そしてビジネスバッグを放り投げて大天使の翼で高く跳躍した。
そのまま壁を越え相手にフォトンを放つ!
しかし漆黒の粒子砲がそれを迎撃、蒸発させる。フォトンの乱用は得策ではない。
同じ過ちは犯さない!
俺はアダマスブレードを打撃に切り替えて一気に相手の懐へ入った。数発放たれた粒子砲をかわしながら懐に入った俺は相手の腹をナイフを突き刺すようにして打つ!
流石にダメージはあるだろう。悪いが俺はミアとの闘いで得た経験値がある。
この時点で俺よりLVの高いプレイヤーはまずいないと見て……
えっ……嘘だろ? HPゲージが減ってない?
「くくっ……弱いなお前。」
俺はすかさず距離をとる。するとミルクがタブレットを両手で抱えながら俺の肩に降りてきた。
「シロさま……相手のLVがおかしな事になってます。」
「おかしな事?」
「∞インフィニティ、つまり無限と表示されているんですっ!」
LV無限? 意味がわからないぞ。
すると黒のプレイヤー、ネロの肩の上で三角座りしながら見物していた妖精がすっくと立ち上がりその豊満な胸を揺らす。
ミルクやココアとは別次元の妖精だな……色んな意味で。
「中々やるですの、この前取り逃がした女よりは骨があるってことですの?
でもここでお終いですの、ネロさまはLV無限、貴方もどんな手を使ったか知りませんがそれなりのLVみたいですのね。
それでも、固有システムにチートを組み込んだネロさまに勝つことは叶わないですの!」
白髪ポニーテールの爆乳妖精が話すのを見て、ネロが口を挟む。
「余計なことを囀るな。黙ってろ。」
「はっ、すみませんですの……」
妖精の羽は瞬く間にシュンと下を向いてしまった。爆乳妖精はネロの前髪を小さな指でクルクルしながら少し不満気な表情をしている。
「やーい! 怒られましたねっ!」
「う、五月蝿いでございますのよ! ペチャパイ妖精ミルクなんかにこの【チーノ】を馬鹿にする権利なんてありませんのよ!」
なんだ、妖精って皆んなこうなのか?
ガイド妖精、チーノか。真っ白な長い髪をポニーテールにした爆乳の妖精。肌はミルクと同じ褐色で瞳も翡翠色だな。
この瞳の色は妖精特有の特徴なんだろうな。
騒ぐチーノに、再びネロの雷が落ちたのは言うまでもなく場は一気に静まり返る。
俺もミルクを黙らせて目の前のチーターを見据える。固有システムチートか…やっぱりそうだよな。異世界に転移となりゃお決まりだしな。
それに比べて俺は着せ替え機能か。
「ネロって言ったか? いきなり襲いかかってくるってのはあまりフェアじゃないんじゃないか?
そもそも、何故プレイヤーを狙う?」
「理由、か。別にないな。」
ゴッドゲームのクリア目的ではない?
力を行使して楽しんでるだけか?
いずれにせよ……コイツは危険だな。
「飽きた、ここでゲームオーバーになれや。」
ネロが再び魔法陣にエネルギーを溜め始めると、肩の上の爆乳妖精は口元を緩めた。
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