第324幕 危険な道のり
次の日から俺とスパルナは、他の出口を見つける為に街中を歩き回り、既に誰もいなくなっていた基地の内部も詳しく調べた。ご丁寧に兵力や兵器に関する資料なんかは根こそぎ無くなっていて、大した成果は得られなかったんだけどな。むしろ、あんな広い場所を一人で探索したせいで無駄足を踏まされたと言っても良いだろう。
スパルナの方も完全に空振りだったらしく、いよいよもって選択を迫られてしまった。
「お兄ちゃん、どうしよう?」
「……あの駅を突破するしかないだろうな」
スパルナの報告を聞いていた俺も、実際あの駅に様子を見に行ったんだけど……あれは酷かった。攻撃機の事を、地下では航空戦力と呼ぶのをつい最近知った……んだけど、その航空戦力とやらは全くなかった。地下の空を飛ぶ、なんてすごい字面だけどな。
その代わり、戦車やらそれに似た車やらが周辺の道路を塞いでいて、それを突破しない限り駅の中に入ることすら出来ない。完全に封鎖されている上に、今まで見たことがない位の武装をした兵士が見張っていた。今まで見た軍服だけの兵士たちとは違い、軽鎧に似た何かを着込んで、兜みたいなものを被っていた。
あまりの物々しさに、一般人が遠くから怯えるように様子を伺うだけだったからな。幸い、人気はないから戦う力の無い市民には被害が及ぶ心配はなさそうだから、それだけは本当にありがたかった。
「でも、あれに真正面から突撃しても……」
「まあ、間違いなく激しい攻撃に遭うだろうな」
だが、俺には俺のやり方がある。なにも馬鹿正直に行くことだけが全てじゃないさ。
――
厳重に警戒されてる駅までやってきた俺たちは、作戦を決行することにした。
作戦自体は至ってシンプル。要は物量作戦だ。
「お兄ちゃん、よくあれだけの物を作る魔力あるよね」
「そういえば、そうだな。ま、俺もその分成長してるってことだ」
俺が使ったのはジパーニグのときと同じように、命を吹き込んだ炎や氷の鳥を作り上げて、空の方に待機させてある。今更慎重に、だなんてやっても無理な話だからな。結局、相手が『索敵』に魔力を注いでいる以上、下手な小細工は通用しない。
「……よし、行くぞ。スパルナ」
「うん!」
掛け声と同時にスパルナと一緒に駅を封鎖してる兵士たちうに向かって行く。それと同時に、上空に待機していた鳥たちに指示を出して、一斉に突撃させる。
「なんだ……?」
「敵襲! 敵襲ーっ!」
三方向から同時に攻撃を加え、敵兵を上手く混乱させる事が出来た。戦車の方は鳥たちの処理に追われてるようで、俺たちはこっちに向かって発砲してくる兵士たちを冷静倒していく。
「くっ……このぉっ!」
分厚い車――装甲車に乗り込んだ兵士が持ってる銃から、激しい音と共に火を噴いた。慌てて『防御』の魔方陣を展開して、そのまま一度足を止める。
「くそっ、あれはなんだ?」
兵士たちが携帯しているのよりもずっと大きな銃。あれは確か――機関銃だったか。大砲みたいな感じの種類だから、ちょっとよくわからないな……。
それが俺やスパルナの移動を制限して、生み出した鳥を次々落としていく。このままでは戦車も動き出して、突破はより難しくなるだろう。
ちらっとスパルナの様子を見ると、魔方陣で爆発を引き起こしてるようだ。それが丁度良く目眩しになるのか、弾幕が止んで前に進んでいる。
「流石……負けてられないな」
兄として、もう少し良いところを見せたいが……さてどうしたものかと頭を捻った俺が出した答えは、『泥』『命』『
このねずみに多めに魔力を練り込んで……更にちょっとした
その間にも激しい弾幕を防ぎ続け、何度も『防御』の魔方陣を貼り続けていたのだけど……やがて変化が訪れる。
「な、なに……がああああ!?」
「な、なんだ!? 何が起こっている!?」
急に下から爆発が起こったり、風が吹き荒れたりしている事に兵士たちは戸惑っているようだ。
これはねずみに色んな
「ちっ、ひ、怯むな! 撃て、撃てぇぇぇっ!!」
この中でも冷静に対応しようと努力している者もいるけど……もう遅い。ねずみたちに翻弄されている間に、俺は次々と魔方陣で命を宿した獣を生み出す。炎の鳥。氷の狼。雷の虎。いつも使ってきた奴らから他の獣たちまで。
「くっ……」
一度に展開したせいか、ごっそり魔力が無くなっていく感覚があるけど、気にしていられない。
「スパルナ! 今の内に抜けるぞ!」
「う、うん!」
獣たちを一斉に解き放って、絶えずねずみから魔方陣の攻撃を浴びせられている兵士たちを撹乱させて隙をつくる。その間にスパルナにはあの大きな鳥の姿になってもらい、この激しい戦線を一気に駆け抜け……俺たちは駅を抜けることに成功した。
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