フローリングの世界

作者 神崎

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★★ Very Good!!

望めばあらゆる物が手に入る家(世界)を手に入れた少女と、それに対し疑問を持つ少年の話。

昨今は物質的な豊かさに満たされているけれど、果たしてそれが、本当の豊かさに繋がっているのか。改めて考えさせられます。
何もかもが楽に手に入ってしまうからこそ、そうした世の中に対し疑問を抱く視点を持つ必要がある。この小説には、そんな哲学があります。

★★★ Excellent!!!

 無限に巨大化してゆく家にひとりの美少女という設定が面白い。
 無限の建造物といえば、ボルヘスの『バベルの図書館』が圧倒的に有名だろう。バベルの図書館はまさしく宇宙大であり、文學的には宇宙の隠喩であった。本作では全軆がフローリングで出来た家が舞台となる。これは無限大ではない。が、『無限に巨大化』してゆくのである。其処に棲むのも少女ひとりだ。換言すれば、少女は無限にひろがってゆく家にひきこもっているかたちになる。ひきこもり文學といえば『地下室の手記』が有名だが、本作はもっとあかるく、神秘的である。個人的に、数年間ひきこもっていた時期があるので、家全軆がフローリングで出来ているという設定からも、著者はかなりしたたかに、意図的に、やさしいひきこもり文學をえがいたのではないかとおもう。たしかに、無限にひろがってゆき、必要なものはすべて其処から誕生するという家――というよりは部屋か――はひきこもり諸賢のあこがれだろう。TVでも新聞でも、周期的に問題視されるひきこもり現象を、斯様に、あたたかなタッチでえがいたところが素晴らしい。ボルヘス的な衒学になびかず、冒険も論考もせず、ただ『生きている』だけのひきこもり少女という人物像も好感がもてる。愚生がこんな家を掌握したら、無尽蔵の資料を蒐集し、すきなだけ小説を書くかもしれない。
 南米文學愛好家や、実際のひきこもりのかたに推薦したい作品でした。