あの湿った地中に帰りたい


地面からもぐらが出て来た

出て来るべきでは無かった

だが出て来た

方向を間違えたのだ

もぐらは太陽の光に早速、目をやられた

「キュピ」

それはもぐら語で助けてくれという意味だった

もぐらは地中に帰ろうとした

その身体を小さな子どもに掴まれた

そして放り投げられた

空中でもぐらはかつてない違和感を覚えていた

身体が何処にも触れていなかった

ここは自分のいるべき場所ではないということだけはわかった

もぐらは地面に叩きつけられた

そのあとそっとブランコの上に置かれた

半死半生であの真っ暗なじめじめと湿った空間がひどく懐かしく思えた


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