第184話 一安心
1秒、1秒と時間が過ぎて行く。
暴走状態のアルラが攻撃の手を休める事は無い、常軌を逸した超反応……正直この手が通用しなければ諦める他無かった。
「集中しろ」
辺りに散らばった闇の破片、準備は整っていた。
大きく深呼吸をする、ユーリの治癒も早くしなければ少し危ない状態だった。
『40秒経過』
冥王の声が聞こえる、それを合図にするように隼人は足元の闇に姿を消した。
辺りに散らばる闇を警戒するアルラ、流石にこれ程不自然に散らばっていれば警戒する様子だった。
なるべく闇から距離を取ろうとしても闇は満遍なく散らばり逃げ場は無かった。
ふと背後から気配を感じ一瞬にして防御耐性を取るアルラ、だがそこに居たのは隼人では無く、彼と同じ背丈をした闇の塊だった。
「気配を感じれば反応する……超反応が仇になったみたいだな」
アルラが正面を向く頃には既に刀の柄が眼前に迫っていた。
柄はアルラの首側面を捉えると角が消えその場に倒れる、上手く気絶させれた様だった。
だが安堵している暇は無い、ユーリの治癒がまだ終わって居なかった。
闇を利用して一瞬でユーリの元へ行くと治癒魔法を施す、痛々しい傷がみるみる塞がって行く……凄い力だった。
やがて治癒は終わりユーリの苦しげな表情が和らぐ、一先ずは安心だった。
「俺も……この力に頼らずとも仲間を守れるようになりたいな」
そう言い刀を鞘に納める、すると冥王の力は消えた。
『寿命7年、左の視力……代償は貰った』
その言葉を残し気配が消える、正直片目で済んだのは幸運だったのかも知れなかった。
だが……次はこれ程軽くは無いかも知れない……そう思うとこの力を使うのは怖かった。
「だが……まぁアルラ達を助けられただけ良しとするか」
そう言い隼人はユーリの隣に腰を下ろした。
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体の至る所が痛い、頭もクラクラする……ふと瞳を開けると眼前には一面の青空が広がっていた。
背中には地面の感触……天を仰いでいた。
何故こんな状況になっているのか……必死に記憶を辿るが思い出せるのは隼人さん達と街を歩いていた所までだった。
「私は一体……」
ゆっくりと立ち上がる、見覚えのある草原だった。
ふと視界の端に横たわるユーリと傍に座り空を見上げる隼人の姿が見えた。
「隼人さん……これは?」
土が所々抉れている地面、気絶しているユーリ、そして所々に傷がある隼人……何も覚えていない故に混乱していた。
敵襲があったのか、そもそも何故アダマスト大陸に戻っているのか……パンクしそうだった。
「まぁ、あれだ……俺から言える事は1つ、ありがとうなアルラ」
「ありがとう……ですか?」
突然礼を言われた事で更に困惑する、知らない間に敵を退けた……と言う訳でも無さそうだった。
「アルラさんは何も悪くないっすよ」
気絶していたユーリが突然目を覚ます、2人して何を言っているのか分からなかった。
「どういう事ですか?此処で何があったのですか?」
「覚えてないならそれでいいんだよ、大した事じゃないしな」
「そうっす、大した事じゃないっすよアルラさん」
そう言い立ち上がる2人、何か隠しているのは明確なのだが2人共話すつもりは無い様子だった。
「そう……ですか」
腑に落ちない……だが無理やり問い質す程の出来事でも無さそうだった。
「そうだ、それじゃ元の場所に戻るからしっかり掴まってろ」
そう言い突き刺していた杖を左手で取ろうとする隼人、だが手は杖より少し手前の空を掴んだ。
「どうされましたか?」
少しの違和感、尋ねてみるが隼人は何事も無かったかの様に杖を掴みなおした。
「少し疲れたのかもな」
そう言い笑った。
そして体は光に包まれ、隼人達はアダマスト大陸を後にした。
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