桜花一片に願いを

作者 橘ゆえ

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★★ Very Good!!

祖母の屋敷に植わっていた綺麗な桜。祖母が愛し、孫である彼もまた幼心に愛していた桜が、祖母の死後に忽然と消えた。いったい、何故。桜はどこにいったのか。どこにくるのか。

美しいものは時に恐ろしく、ひとのいのちを脅かします。危険なもの。故にこれほどまでに美しく、魅了されずにはいられないのでしょう。

時に桜には毒があるのをご存知ですか。
桜葉の毒は雨に濡れるごとにじわりじわりと根方に浸みて、あたりに繁る雑草を殺していくのです。だから桜の根方では雑草があまり育たない。桜の香りは毒のにおい。側にあるものを緩やかに殺しながら、桜はあれほどに美しく咲き誇るのです。

★★★ Excellent!!!

お婆ちゃんの家にあった、とても綺麗な花を咲かせる桜の木。
お婆ちゃんが亡くなって、家が取り壊された時、何故かその桜の木は、忽然と姿を消してしまった。

突然起きた、摩訶不思議な出来事。最初この話を読んだ時は、桜の木はお婆ちゃんの後を追いかけたのかな、なんて思いました。だってその桜の木はいつだって優しく、皆を見守ってくれていたから。そんな不思議なことが起きてもおかしくないかもって。
だけど忘れていましたよ。このお話のジャンルが、ホラーだということを。

桜の木の描写が綺麗で、物語の世界に吸い込まれていきそう。だけど綺麗なモノが良いモノとは限りません。優しいと思っていたモノが、危険なモノで無いとも限りません。
美しさの中にある、凍りつくような恐怖。桜の木の真実が明かされる後半は、読んでいてゾクゾクしました。

★★★ Excellent!!!

大好きだったお婆ちゃんが亡くなり、お婆ちゃんが住んでいた家も取り壊された。そして今度は、そこにあった桜の木が消えた。
大好きだったものが一つ一つ消えていくその様子に寂しさを感じずにはいられません。

これでジャンルが現代ファンタジーなら、失われたものを埋めてくれる暖かななにか現れてくれるところですが、本作はホラーでした。
現れたのは、美しい何か。ですがいくら美しくても、好きだと言う言葉をもらっても、それが幸せを運んでくれるとは限りません。暖かだった思い出さえも、最後はゾクリとした恐怖に変わったような気がしました。