第94話【VS〝熊〟過去への決着編その1】
自らの命を省みずに〝餓鬼の断壁〟では猿の群れと闘う者達がいる。
超危険区域とされた〝晦冥の奈落〟へ向かうアイナ達と同じ刻に、ただ1人だけ己と向き合いながら闘う女性がいた――――
幾度となく師であるドーマへ挑み続けたが、その〝極地〟へは今のニッシャでは辿り着けずにいる。
戦績としては〝248戦0勝248敗〟。
それがニッシャとドーマの力の差であり、残酷ではあるがそれは揺るがない事実でもあった。
『ハァッハァッ――――たくっ、あんたら親子は、
身体強化を得意とし、己の身を燃え盛る魔力に変換する〝火速炎迅〟を解いたドーマは、疲弊し地べたに寝転ぶニッシャの顔を覗いて言った。
『ハッハッハッハ!!短気なお前はⅢ速まで上げたのに対し、俺はまだⅡ速と来たもんだ。まだまだ修行と練度が足りないみたいだな〝朱天の炎〟さんよぉ?』
時を忘れるほど闘い、無限に涌き出る魔力を使用し、何度も何度も挑んだが〝やはり〟勝てなかった――――
だが、その顔に悔しさはなく、清清しい気持ちで心が満たされていた。
『そのムカつく髭面に、一片ブチかましてやりてぇ所だが、さすがの私でも、ちと疲れたわ……』
『オイオイ、まだ
体力と気力を共に消耗し、ついでにヤニが切れ、多少のイライラが募るニッシャは、煙草を求めた。
『ハイハイ、分かったからせめて一服させてくれ……よ!?』
笑顔で聞いたドーマの形をしたそれは、話を聞いていないのか口角を上げると、ニッシャから少しだけ離れ四つん這いの
そして、真剣な面持ちでこう言った。
『ニッシャ、お前はもう一度死なないと駄目みたいだな。今から行うのは単なる
ニッシャは下半身を大きく天へ突き上げ、その勢いで飛び起きる。
胸の隠し煙草一本を口に咥え指で火をつけると、姿形を変えたそれに向かって大量の煙を吹き掛ける。
『私の精神世界だからって、ビックリ箱みたいにコロコロと変身しやがって――――
初めに出会った時そいつは獰猛な存在だった。
今、思い返してみれば小さな命を守るために向かってきた行動でもあった。
目の前の――――精霊によって造り出された、そいつを殴り付けるために彼女は立ち上がった。
〔ニッシャ〕=【
【危険度level-Ⅳ】
VS
〔超大型熊〕=【全能力強化】
【危険度level-Ⅱ→Ⅲ】
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