第43話【子育て日記二日目】(組み手編その6)

 3番頭であるバルクスを素手で倒したとはいえ、相手は女であり先程の戦いも平気ではなく単なる痩せ我慢だと、考えるものは少なからずおり、【多勢に無勢】と言う文字通り、大多数で囲めば勝率は飛躍的に上がるのだ。


 ニッシャは眠った闘志を焚き付ける様に、怯えた羊に酷似している男達に怒鳴り散らす。


「相手は、女1人でしかも血に飢えた狼とあれば、何をするか分からない。だが、お前達には数の理と戦略を補う程の力がある――――己を信じ、仲間を信頼し一斉に飛び掛かれ!!」


 そんな言葉を聞いたか聞かずか、互いに目を合わすと四方八方から、十数人が同じ瞬間に飛び襲ってくる。


 嬉しそうに目を輝かせるとタイミングを見計らって煙草を頭上高く投げ、雄叫びに似た声を上げる。


「狩りやすくて結構だ!!いいか?……全員意識をしっかり保てよ!!」


 空中で階段を昇る様に掛け上がるニッシャは、襲い来る男達の顎目掛け、螺旋を描きながら自慢の長い足で 一撃ずつ的確に当てていき、着地と同時に無防備に落下する、屈強な男達の無惨に叩きつけられる姿を間近で見た他の者は、何が起きたか分からずに互いを見合わせていたが、その表情はまさに「鳩が豆鉄砲を食ったよう」な顔をしていた。


頭上から降る煙草を掴むと、一息で吸い上げ一言。

「今ので、だいぶ人数減ったと思ったらまだいるのか……道場サイコー!!」


「ぐへっ!!」や「ヴぁっ!!」と言った、いかにも痛々しい声が聞こえるが、容赦なく寝転ぶ弟子達を踏みつけ、鬼ごっこを彷彿ほうふつとさせながら、逃げ惑うおにが追いかける姿は、見ていてとても面白いのだがやっている方はたまったものじゃない。



 次々と倒される中、有ることを思い付いた男達がニッシャに一矢報いるため、互いに手を取り合い立ち上がろうとしていた。


「このままじゃ、俺達はただ遊ばれて終わるぞ!!どうする?」


魔力マナ使うなって言うのが道場ここのルールだが、あんな化け物女相手に素手で挑むなんて自殺行為だ!!」


 数人の勇敢な男達は逃げるのを止めると、振り向き様に反旗はんきひるがえし、攻撃を浴びせる作戦に出た。


「女ー!!【窮鼠きゅうそねこむ】って言葉知ってるかー!?今まで散っていった仲間達の無念をこの一撃に賭けるぞ!!喰らいやがれ絆の連携技【裏切りの火球フレンドリーファイア】!!」


 全ての想いを乗せて今、直径3M程の小さいながら燃え盛る太陽が、憎きニッシャ目掛け放たれる。





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