第27話【現れし闇】(探索編その1)


 激闘から間もなくして、ニッシャ達が楽しく水遊びで戯れている一方。


 陽の光すら届かず微かに感じる水の匂いに包まれながら、ノーメンとセリエの二人組は深い闇に溶け込むようにある極秘任務へと就いていた。


 ――――〝深淵しんえん渓谷けいこく〟――――



〝任務内容-残りの聖霊三体を探しだし、捕獲又は拘束する事〟


 足跡も残らぬ岩肌を歩いている二人組の片方は、意気揚々と前へ進んでいる。


 ――――が、任務途中にも関わらず、得意の魔法で浮遊しながら昼寝の様に寝そべっている男セリエは、独り言の様に話しかける。


「残る大精霊の一部は三体何だけどさ。そいつらがまた面倒でね。何て言ったっけなー。時を司るセントキクルスに水の守護神イメサリスと後は……忘れたわ。ノーメンさん何だっけ?」


 流暢りゅうちょうな喋り方に物忘れが激しく、どこかおとぼけているセリエはノーメンに質問をする。


 だが、返答はおろか相変わらず無口な大男に軽く舌打ちをすると、肩に乗り周囲をほのかに照らしている子犬タイニードック威嚇いかくする様に吠えていた。


暴君タイラント殺戮芋虫デスワーム》100Mタイプ〕=【危険度level-Ⅲ】


(MAXの体長が200Mを越え、数千もある鋭利な牙と丸太の様な体格に加え、肉食獰猛であり産卵期には、2万~5万の卵を出産するがその9割強は同一種に補食される。寿命は70年と比較的長いが、そこまで存命の個体はいないとされている。)


 あまりの巨大さに後退りをするノーメンと気にも止めないセリエの両極端な二人と、臨戦態勢に入る子犬タイニードックだが、ある一言で我に返った。


「お前等よく見ろよ。こいつはな、に殺されているんだ……しかも、でな」


 戦慄し呆然と立ち尽くすノーメンを他所に芋虫ワームを叩きながら早口で語り続ける。


「まだ見るからに幼虫ようちゅうだが、立派なlevel-Ⅲだ。こいつを相手に争った跡も周囲にはない上にが綺麗さっぱりと。この意味わかるかいノーメンさん?」


 マスクで相変わらず表情が見えない。


 しかし、考え込むように静かに頷くと、尚も吠え続ける子犬タイニードックを消し、珍しく喋り出す。


「協会の調査通り、お前が何処かへ飛ばしたlevel-Ⅳの焔獄兜武者ヘルクレス……或いは、それ以上の大物と言うわけか?」



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