第20話【子育て日記2日目】(朝食編その6)

 ――――〝屋敷内大広間〟――――


  回りを見渡せばどうやらいつもの時間より二時間程遅い朝食らしく、開始と共に男達の料理は、あっという間になくなっていった。


 視線を目の前へと戻すと左右の二人は、子どもらしく食べている。


 というか左の子は、まだ歯がないため離乳食をスプーンですくってもらい食べさせてもらっているのだ。


 時間が無かったので離乳食は、未熟な舌が火傷しないように火力を調整しながら調理している


 歯がまだ生えていないのを確認済みなので、裏ごしして食べやすさと程よい塩加減で飽きない味を追求してある。


 右の子は、目を輝かせながらお椀で型を取ったお米の頂を豪快に崩しながら食べている。

 1日を元気に始めるには、まず栄養バランスの良い朝食をしっかりとらないといけない。


 野菜と卵を中心とした料理を作り、デザートにプリンやパフェ等の洒落た物を作りたかったんだが何せ104を作らないといけなかったので、子ども達の果物の盛り合わせだけは用意できた。


 見た目は実にシンプルで、林檎や梨で作られた、うさぎくま


 それからたぬきなどの、森で出会った動物達に似せたんだが果たして気付いてくれるだろうか。


「ニッシャこれ見てー、キリンさんだよ!!可愛い!!」

(それはリスだよ、ミフィレン)

「これは、くまさんだよ!!」

(それも、リスだ)

「これは、リスさんだよ!!」

(それは、貴女の食べかけだよ)


 口元にご飯粒を着けながら見当違いなことをゆっている……がそんな可愛らしい所も愛しいポイントだ。


 続いて真ん中のはというと。


 赤子に気を配りつつミフィレンの口元を拭きながら、合間を見てはティーカップの紅茶を口に含んでいる。


 ひとりでに動くナイフが食パンを一口サイズに切り分ける。


 宙を飛び回るフォークが目標目掛け静かに突き刺さり、アイナの口元まで運んでいくのだ。


 私には、真似できない見事な世話焼きスキルに多少の嫉妬を覚えた。


 複雑な命令を単純な動作だけで自らレールに敷かれた働きが出来るのは、優秀な魔法使いの証拠である。


 ――――が、その系統は私が苦手な分野でもある。

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