第20話 ダブルカップリング
結局あの雰囲気は留まることを知らなかったようで日時、場所など、とんとん拍子に決まって今日はその当日であった。
季節は運動すれば暑いだろうなくらいの夏よりの春。
服装は黒色のパーカーにジーンズ。対する莉櫻はチェックのシャツにダメージジーンズを着ていた。……格の違いを見せつけられた気がする。
「潤平はどこ行くのか知ってる?」
「……いや、知らない。あの2人が来るまでは謎だ」
今回のプランは女子組2人が考えた。そのプランは俺達には秘密にされ、駅で待って手と指示を受けていた。本日もデートという事で資金はたっぷり持ってきている。
「俺、潤平が付き合っているなんて知らなかった」
長年の友達のような言いぐさでしみじみ呟く莉櫻。だが友達となった日に秘密を知られたので俺としては結構複雑な気分だ。
「……なら、真鐘と付き合ったらどうだ?それなら堂々の2組カップルだぞ?」
「俺は麗律にふさわしくないから無理だよ」
2人揃って同じことを言いやがる。
「けど……麗律はどう思っているんだろ」
心底さっさと付き合えと思った。要するに莉櫻はへタレでコミュ障なのだ。その障害が『友達として話すこと』しかできないという特殊な事例なだけで。
こじらせると面倒になることは身をもって知っている。俺がこじらせたのは中学……。
「お待たせ」
「ごめん。遅れた」
俺が過去の記憶へとタイムスリップしようとしたところで現れたのは美玖と真鐘だった。
美玖の方は薄い桃色のワンピースを着ていた。良く似合っており俺は自分との格差に心で大分落ち込んだ。
対して真鐘の方は男っぽいというか……。くすんだ赤色のパーカーに莉櫻と同じダメージジーンズだった。
「いいじゃん2人とも」
「……うん。似合ってる」
莉櫻が先に行ってくれたおかげで普通に言い出すことが出来た。
「う、うるさい」
「…あ、ありがとう」
2人ともクリティカルで照れていらっしゃる。この光景を眺めるだけども十分なのだがプランがあるようだし今の内に脳に焼き付けておこう。
「今日は何処に行くの?」
「……だから俺に訊くな。美玖か真鐘に訊けよ」
おい。二マニマしてんじゃねぇ。莉櫻もこのデートが終わることには「麗律」と呼ばせるようにしてやる。
「鶴田。大人しくついてきて」
字面だとすごく怖く見えそうな一言だがこれが真鐘のいつもで莉櫻もそれを分かっているから何も言わないんだと勝手に理解しよう。
「私達も行こ」
「……今日は何処に行くんだ?」
「潤平君でも秘密。残念でした」
おぉっとそれは残念。
それから俺達は駅に行き電車へと乗車。(券は美玖たちが買っていた)ゆらりゆらり30分ほど過ごすと目的地に到着したらしい。
電車の座席についてはしっかり、俺と美玖、向かい側に莉櫻と真鐘で座っていた。
「成程。これはすごいや」
確かに俺の視界に飛び込んでくる大門はスゲェと思うがここは何処で何なのだろう。
俺はコミュ障になって以来、家、学校、近所のスーパーにしか行っていない。テレビも全く興味がないため見ていない。その為か俺の先に立っている物が何かさっぱりわからなかった。
「まだオープンしてから半年も経っていない新しい遊園地だよ」
美玖が教えてくれる。遊園地か。良く耳を澄ませばキャー!!という絶叫が聞こえてくる。絶対に乗りたくない。
「美玖!!置いていくよ!
「あ~待って麗律。今行く」
女性2人ははしゃいでいるらしい。真鐘の隣でこちらに大きく手を振っている莉櫻は「ちょっと近い!」と攻撃され、しょぼんとなっていた。
「……美玖、真鐘。いつから考えていたんだ?」
入園待ちの行列の中で俺は疑問を口にした。この人の量。相当に賑わっていると思う。だがそれなら馬券を取るのにも手間がかかったに違いない。ここ2,3日でできることでは無そうなのだ。
「いや……それは、その」
「やっぱり松平は鋭いな。美玖、言ってもいい?」
「しょうがないね」
もじもじしながら消え入りそうな声の美玖。
「1か月前に自分と美玖が別々だけど券の応募してたんだ。そしたら2人共通ってさ」
つまりなんだ?美玖は俺とのデート場所として準備をしてくれていたという事か?
「……それでいい機会という事か」
「そういう事。まぁ美玖は“潤ぺ……ふぐっ!」
「あーっ!なんでもないから。うん、本当に」
美玖が慌てて真鐘の口を塞ぐ。だが、俺は勿論、莉櫻もわかってしまったため遅かったようだ。
「良かったな潤平。もったいないぐらいだな」
「……ほっとけ」
自分でも思ってはいたが他人から言われるとダメージが2倍ぐらい違う。……痛い。
「端山さんは分かったけどどうして真鐘も?」
え~。そこは察してあげようぜ。せっかく頑張ったっぽいのに。
「知らないっ!……なんとなく、気分で」
「そっか。俺を誘ってくれてありがとうな」
「お、おう。感謝しろよな」
何とまぁ。莉櫻は無意識だと思うが下げて上げやがった。俺には不可能な芸である。
「もしかしたら……なるかもね」
美玖が俺に小声で言った。実際このままいけばなりそうではある。なりそうではあるが問題は2人が自分を相応しくないと思っていることと莉櫻の無意識を自覚させてやることだ。
けどここまで来たんだ。相談相手から友達となったからには協力するのは必然だろう。
「……美玖。2人をくっつけたいか?」
「相談もしてるし、そうしてあげたいけど…」
そんないい考えがあるの?とでも言いたげな眼をしている。
「……協力してくれないか?」
「私でよければいつでも潤平君の協力、するよ」
「……なら、俺に任せてくれ」
美玖が驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。この時俺は昔の口癖を言っていたころに気付かなかった。
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