冴えないオレ 健人

第4話 タヌキ先生と巡るクラブ見学

「大野! まだ決まんねえの? 部活ぅ」

 ソイツは変顔をしながら、廊下でオレをどついてきた。

「まだだ」

 からかいながら同じクラスの大柄でちょっと目つきの悪い長杉が来ると、オレは腹んなかじゃあまり関わりたくないと思っている。

 他人事ひとごとだと思って馬鹿にしやがって。

 

 小学校時代も長杉とは一緒のクラスになったことがあったが、だいたい何かのネタにされたりいじられては悔しい思いをしてきた。


 いつか長杉にガツンとくる仕返しをしてやりたい。

 オレは本気でそう思っている。

 日頃の恨みが重なり、怒りで心が煮えたぎっていた。


 また長杉が何か仕掛けてきそうだったので、オレは踵を返して長杉をかわした。

 ふんっ!

 こんな奴かまってないで、早くタヌキ(先生)のところへ行こう。


 職員室の前でタヌキ(先生)はオレを待っていた。

「今日はとっておきの部活に連れて行ってやろう」

 タヌキ(先生)はにこにこ自信満々に言った。

 タヌキ(先生)はでっぷりとした腹を、ゆっさゆっさ揺らしながら歩き出した。

 理科室とか家庭科室とか音楽室とかが入っている特別教室棟に来た。3階の一番はじの教室を、タヌキは階段が辛かったのか息を切らしながらガラッと開けた。

(ここなんの教室だ?)

 初めて入る教室だった。


「おお! 今日はいたか。若槻わかつきさん」

 タヌキ(先生)が声をかけた先には一人の女子生徒がいた。

 その人にオレの心はきゅんって高鳴って、視線は釘付けになる。

(…詩音しおんさんだ)

 すごい美人だ。

 オレはこの人を見るたびにそう思う。

 だってテレビとかで見るアイドルとか女優さんみたいに可愛い。

 詩音しおんさんは、今期の生徒会の書紀なんだ。

 行事や朝礼なんかのたびにオレは、詩音さんを見かけてはドキドキしてた。

 このあいだも廊下ですれ違った時につい見惚みとれちゃってさ。何もかも忘れてぽーっと頭が詩音さん一色になる。

 


 この教室には詩音さんしかいなかった。

 後ろの窓から光が差し込んできていた。

 詩音さんの背後から陽光は注いでいるから、なんだか神々しい感じすらあった。

 いや太陽に照らされてなくたって、詩音さんは美しい。


「ニ年の大野くんだ。

 三年生の若槻さんは副部長だから、説明聞いてごらん。

 先生はちょっと明日配るプリント作らなきゃならんから。

 あとでまた来るから。なっ?」

 なっ? っておいっ!!

 オレがこんな美人といきなり二人きりで、話しなんかできるわけねえだろうが!

「こんにちは」

「こっこっ…こんにちはっ!…」

 詩音さんのあまりの美しさに、ドキドキが止まら〜ん!

 あの若槻詩音さんと、初めてこんな距離でいる。

 近くにいるってだけで、オレの心臓がバクバクなんですけど〜!……


 オレはもうだめだー。

 嬉しすぎて倒れそう!


 鼻血が出るかもしれん。

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