第1話 幼なじみの和正

 中学二年生になったオレ。

 一年の時に入ってた部活が先輩が引退したり転校したりで、オレしかいなくなり潰れてしまった。


 オレは渡り廊下を歩く。

 チラッと張られたポスターを見る。

 忘れさられたようなその小さな場所に個性の強い絵や字を書いたポスターが主張をしているように俺には見えていた。

 実はオレの書いた作品もその中にある。

 オレが所属していたのは、ポスター研究部というおそらくはこの学校にしかなかったであろうクラブだった。

 

 夏休みの課題に向けてひたすらポスターを作ったり学校の標語を考えたり、真面目にみんなで語らい必死に思いを込めて作品を作るのはオレにとって最高の場所だった。

 

 部員は大人しい目立たない感じの人ばがりで。

 だけど本当は情熱に溢れていた。

 自分が作り上げる作品にみんながテーマや伝えたいことを心から込めていた。

 たとえ渡り廊下のその小さきスペースに誰も目を向けていなくとも、ポスターを書き上げた俺たちは満足していた。

 

 そこには意地悪な先輩もいなくて害もなかった。


 なんの取り柄もないオレでもあまり劣等感をもたずに過ごせたから心から居心地が良かった。

 

 だが。

 そう、いかんせん地味だった。


 かなりポスター研究部のことは好きだったのだ。

 オレは存続を願っていた。しかし新しい部員はとうとう入らなかった。


 うすうす廃部になりそうなことは感づいていたが、昼休みに職員室に呼ばれてポスター研究部の廃部をとうとう決定的に知らされたオレは新しい部活を探すこととなった。



(あっ……。あの人は……)

 オレは職員室から教室に戻る途中に一人の女子生徒に目を奪われていた。

 どこに行く途中なのか?

 廊下ですれ違うと胸が高鳴った。

 その人に会えたら嬉しくて。

 彼女はふわっと優しく隣りの女子生徒に笑っていた。

 


 

 下校途中にトボトボ歩くオレ。

 呼び止めたのは事情を知っているアイツだ。

健人けんと! サッカー部来いよ」

 グラウンドから走って来たのはおさななじみの和正かずまさだ。

 サッカー部のユニホームが似合いすぎる。

 さわやかすぎる。

 まぶしい。

「お前が来てくれたら俺嬉しいし」

 なんのイヤミもない良い奴なのだ。

 そしてすごいイケメンだ。

 

神様どうしてこんな不公平をなさるのでしょうか?


「オレはいいや。サッカー苦手だし」

 オレはコイツの引き立て役に過ぎない。

 サッカー部なんかに入ったら、ますます卑屈になってなんにも悪くない和正を恨むかもしれん。

 ますます性格がひねくれて、オレはどんどん性格の悪いやつになってしまうに違いない。


 

 そうして次の日からオレはあちこちの部活に見学に行かなくてはならなくなった。


「うちの学校はずっと同じ部活という縛りはないが、だいたいの生徒はあまり部活異動しないからなあ。

 お前ぐらいだぞ。

 二年生で部活見学すんの」

「はあ」

 オレはポス研(ポスター研究部)の元顧問のタヌキ(名字は田貫たぬきでしかも狸にそっくりな先生)と部活巡りをしている。


 だが今日一日、何か所か見たなかではどこのクラブにも入る気がオレは全くしなかった。

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