海外での日本人狙いに注意(元ネタ:アムステルダム日本人駐在員バラバラ殺人事件より)
早朝のアムステルダム。
その運河の辺を日課である
毎朝のジョギングとしている男が走っている。
そして運河に降りる石段の近くで小休止する。
「ふう。朝のジョギングは身体にいい。」
この中年の男性は小さい頃から欠かしていない
この日課のおかげで結婚してからこの方、妻から
体形の事で弄られた試しがない。むしろ妻の方が
ここ最近、日本の運動不足な中年女性にありがちな
オバサン体形になりかけてるのを懸念するくらいだ。
「さて・・・」
もうひと走りするか・・・何て、走ろうとすると運河の石段に
何やら引っかかってる浮いたモノを見つける。
男は、通りがかりの男性を呼び協力して
それを引き上げる、その金属製のトランクはカギがかかってない様だ。
おもむろに中身を空けて見る。
するとそれに入っていたのは首と肘から先の腕と
膝から先の足が無い死体であった。
当然、二人の男性は悲鳴を上げて驚愕した。
そして警察が呼ばれ死体の検分が行われる。
やがてアムステルダム所轄の警察のテレビでの声明によると
遺体は日本人でありそれを日本の警視庁に国際刑事警察を介して
問い合わせた所、この遺体は確かにオランダへ長期出張の
男性である事が判り、その男性は死亡推定時刻の翌日が
そのビザが切れる日であり日本の外務省もその事に関し
重い腰を上げようとしていた矢先の出来事だったという。
そのテレビでの声明を見ていたひとりの若い少女が
薄ら笑みを浮かべている。
その彼女のスマホにコールがかかる。
「ステラよ、どうやら成功した様だな?」
声の主は初老の男性らしい。
「はい・・・仕事を終わらせました。
警察は、フェミニストと知り合いの同時日本人男性による犯行と
して片付けているみたいです。・・・ええ、証拠らしきモノは
何も掴んでおりません。」
「宜しい。次の指示があるまで、お前による犯行が発覚しない様に
何食わぬ顔で過ごすのだ。後の引継ぎは他の者にやらせておく。」
「かしこまりました。」
スマホでのやりとりを終わらせると、ステラと呼ばれた
金髪をショートヘアにした少女は、テレビでの警察の声明を見終えると
リモコンを使ってテレビの電源を消し、
そして着用していたメイド服を私服に着替えると
部屋から退出した。ドアを閉め終えると廊下を歩き
階段を下りて玄関から外に出る。
「さて。フェミニストには二人とも、この世から出て行ってもらったし
次は何か楽しみよね?」
やがてスマホに来たメールの指示は現在居るオランダの
アムステルダムからパリへ移動せよとの事であった。
そして彼女は郵便局に行き受け付けの職員から
彼女名義のあて先に届いている郵便為替を受け取りそれを現金化した。
その金額はオランダの公務員の平均月収の22ヶ月分に相当する様だ。
「まあ、こんなモノよね?」
ステラは駅に行くまで市街で買い物や飲食を堪能する。
その日の夕暮れどきの駅。
そこから高速鉄道を使って、もう次の国へ行く為に
ホームに立っているステラは次の発車までの
退屈しのぎとばかりに公共画面のニュースを見る。
ニュースでは相変わらず、このアムステルダムで起った
日本人バラバラ殺人事件を流している。
しかもその内容はホテルを出る際に見たのとさして変らない。
「この国も外国人同士による犯行で幕引きを図ろうとするなんて
まったく、使えないわね。」
ステラとしては、自力で捜査しなければ自分の頭で推理もせず
いつまでも自分を振った女に恨み節を言い続ける
見っとも無い男以下に成り下がった警察を思わず蔑視する。
やがてステラは列車に乗る。
そして彼女を乗せた高速鉄道はフランスの首都のパリを目指して
駅を発車し速度を上げて疾走して行った。
まるで彼女の、次のステージを暗示するかの様に。
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