第12話 擱筆の辞

 ということでこのエッセイも最終回です。

 改めて、参加したみなさま、お疲れさまでした。

 以下、今回のKAC企画を通じて思った雑感をつらつらと。

 まずは、やっぱり48時間制限はきつかったです。

 どんなジャンルで書こうか、と迷っている時間すらもったいない。最初にも言いましたが、何か得意ジャンルを持たなければ駄目なのだと思いました (ただし、歴史ジャンルは日の目を見ないけどな)。

 例えば、シチュエーションラブコメお題が出たとして、ラブコメが得意な人はちょっと特殊なシチュエーションを設定するだけでそのままラブコメを書けばいい。SFが得意な人なら、軌道衛星と地球上の交信という状況でラブコメ的な会話をするとか。ホラーが得意な人にとってはラブコメはさすがに相性が悪そうなので、そういう時だけはホラーを回避して他のジャンルを模索するとか。でも、あえて相性の悪いものを組み合わして作品として完成させることができれば、個性を発揮できるという部分はあるでしょう。

 そして、得意ジャンルを持つことによって、そのジャンルを得意とする他の方と交流の幅を広げる。それが大事だし、今回のKAC企画もそのための絶好の場だったと思います。

 前から言っていますが、カクヨムにせよなろうにせよ他の投稿サイトにせよ、ただ作品を投稿しただけではほとんど読まれることもない。交流をしなければ意味が無い。交流をしないんだったら、紙の公募だけやっていればいい。

 自分は、今回のKAC企画の中では、★を付けた作品ベースで考えると、現時点で約100作品を読みました。

 その内訳を考えてみたいと思います。

1。企画開始前から知っている人の作品。

2。自分が好きなジャンルの作品。

3。自分の作品を読んで★なりハートなり足跡を残してくれた人の作品を読みに行く。

4。ランキング上位、編集部賞、こういったエッセイなどでスコップされてオススメされている作品。

5。並んでいる作品を眺めて、たまたまタイトルなりキャッチコピーなりあらすじなりが目についた作品。

 まあ、だいたいは、この5パターンくらいに分類できるんじゃないでしょうか。あと、ツイッターで見かけて興味を持った、とかもあるかもしれませんが、そのへんは誤差の範囲内ということでオミットしてもいい。

 この文章を読んでいる方も、自分がどのような作品を読んでいたか、振り返っていただきたいです。

 まずは、1の、知り合いの作品から最初に読みに行くんじゃないでしょうか。

 私はそうでした。そして結果的にですが、読んだ作品の大部分は1のケースでした。

 ひとことに知り合いと言っても、当然程度の差というものはあるだろうと思います。身内と言っていいレベルの付き合いの長い人から、普段はそんなに交流は無いけど最低限お名前は知っているといったあたりまで。

 この「最低限お名前は知っている」というのが重要かと。

 5000作品の海から、自分が読めるのはキャパシティ的に100作品くらい。だとしたら、名前を知らない人の作品は、よほど何かの理由で話題になっていない限り、読みに行きません。

 数えてみた。多少雑ですが、趣旨は変わらないのでかんべん。

 私が★を付けたKAC企画の大体100作品中、企画開始前から「最低限お名前は知っていた」方の作品は、53作品、くらいでした。

 過半数、ですわ。

 まあ逆に言えば半分弱は新規に知り合った方ということにもなるのですが。

 でもそのだいたい47作品というのは、自分の好きなジャンルか、自作に対して足跡を残してくれた人の所への訪問か、ランキング上位か、という条件がだいたい付いてしまう。そもそも、交流の幅を広げるために意識して、今まで読んだことの無い人の作品を読むようにしていて、それでもやっぱり半分以下ということ。

 んー。もちろん、それは私個人の事情であり、他の人に該当するわけではないでしょう。でもやっぱり、知らない人の作品は、なかなか読みに行けないものです。ランキングで上位に入っている作品ならば、それなりに面白いんだろうなとはある程度期待できる面もありますが、★がゼロだったりしたら、さすがに地雷じゃねえのか、と躊躇います。

 名前を知っている人の作品、というのは、まあある程度作品の質が保証されているということでもあります。上手い作品を見かけたら、作者の名前も覚えますけど、読んでつまらなかった作品は、いちいち作者名を覚えようとはしないと思います。

 もちろん自分は、他の読者に覚えてもらう価値のある作品を書いているはずです。

 なので、まずは名前を覚えてもらわないと……

 つまり何が言いたいかというと、ロビー活動というか、交流がやっぱり大事だよ、ということです。

 知り合いの作品を含めても、5000作品中100作品くらいしか読めない。多い人は500作とか読んだみたいですが、それだって1割です。残りの9割は読まれていないわけでして。盲亀浮木というか、読んで面白かった作品は、奇跡の出会いを果たした作品だということ。逆に、自作を読んで面白いと言ってくださる読者との出会いも、奇跡の出会いなんですよね。


 あ、そうそう、思い出した。全10回会話文で書いたと言っているが、会話劇の本命であるマグネット会話文コンはどうだったんだよ、というツッコミもあるかもしれない。そちらは無事に落選していますよ。7作出したけど。入選した作品は、短編とはいえ作り込んだ作品だったようなので、下手な鉄砲の書き散らしじゃ対抗しようもなかったです。ということで結果には普通に納得しています。

 作り込み、というワードが出てきたのですが、今回、このお疲れさま会に出ている方のエッセイを見てみると、思っていた以上に作り込んだ作品を出展しておられることに驚きました。

 マジっすか。

 48時間制限ですよ。そりゃ、時間があるからといって作り込んだ作品を書けるわけではないけど、時間制限がきつければ、それだけ限定的な作り込みで妥協するしかないと思っていたのですが。

 練り込むにしても、物語の構成を練り込んだり、また、お題を徹底的に考えて可能性を広げて行ったり、また、普段から作り込んでいるSF設定をこの機会に使う、というのもあったか。それも一つの練り込みであることは確かです。

 そう考えると、やはり普段から設定やキャラなどはしっかり作り込む癖をつけておくべきなのかもしれない。例えば異世界転生チーレムを書くにしても、転生先の異世界を本当に単なるテンプレにしてしまうのではなく、どこか一つか二つくらいでも練り込んだ要素のある異世界にするとか。

 だからこそ、何か得意分野を作って、普段からきちんと作り込んだものを書いてないといけないのか。

 そう考えると、本当に今回私が書いた10作品は、マジで書き散らしです。練り込みは浅い。ジャンルを意図的にバラけさせたから仕方ないという言い訳は辛うじてできるけど、反省すべき要素はあると思いました。


 KAC企画そのものについて。

 おそらく大部分の人にとっては、皆勤賞以外のなんらかの形の受賞というのは非現実的だったと思います。

 ごくごく一部のランキング上位の作品以外は、まあ言ってしまえば底辺ですわ、残念ながら。もちろんワイも底辺の側や。作品の質は決して底辺とは思っていませんけど。

 ただ、その底辺からでもスコップされる可能性のある編集部賞が、全10回中の4回、つまり5000作品中の4作品だけ、というのは、さすがに少なすぎて夢も希望も無かったなあ、と。

 毎回編集部賞を出すとなると、図書カード分の予算的に難しかったのかもしれない。だったら、金銭的報酬が無い名誉だけの佳作的な賞を、1つのお題あたり5作品くらい出しても良かったんじゃないかなあと思っています。

 実際、第1回のフクロウの時に編集部賞を受賞した沢本さんの作品は、受賞をきっかけに多くの読者に読まれることになったようです。それって、もらえる図書カードの金額以上の価値なんじゃないだろうか。まあ、この話は、多くの読者を獲得できたもののハイロックさんに「こんなの中学生でも書けるわ」と言われてしまったオチが付くのですが。

 沢本さんの名前が出たので、沢本さんの作品のオススメ。


ソウル・スイーパーズ  沢本新さん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884510539


 この作品は、第3回カクヨムコンの出展作品でした。

 コンテスト終了後、カクヨム編集部による講評会にも選ばれていました。そこで、オリジナリティの部分が五段階評価で2と言われていました。

 この作品は本当にオリジナリティに乏しいのか?

 そもそもオリジナリティとは、どのようなもので、どのように描けば良いのか?

 ということを考える契機になる作品だと思います。


 レドさん、について。

 この文章を読んでいる人は、当然レドさんの名前は聞き覚えがあるはず。KAC企画のランキング上位で、受賞も何回かあったはず。

 ハイロックさんはレドさんの作品に関して「なんじゃこりゃ?」といった感想を言っておられましたが、確かにあれはナンセンス系の作品であり、むしろ、なんじゃこりゃ?という感想がもっとも正しいといえる。

 で、そのハイロックさんが「ロビー活動の成果じゃないかよ」とおっしゃっていた通り、レドさんは積極的にロビー活動を実施している。KAC企画の作品も多数読んで、コメントも残している。

 で、そのコメントが、ちゃんと作品を読み込んだ上での的確なコメントなんですよ。なので、作者としてはとてもありがたかったです。

 んでんで、私は今回KAC企画で10作品出展しましたが、そのうち4作品を、レドさんが読んで★をくださいました。これって、確率で考えたらすごいことですよね。

 5000作品の海から何の指針も無しに偶然だけでたまたま私の作品を4個も拾い上げるなんてことはあり得ないはず。たぶん、最初の1作くらいは、あくまでもロビー活動として読みに来たんだろうけど、そこで何か刺さる物があったから、リピーターとなって4作品読んでくれたのではないか、と勝手に想像しています。

 レドさんに限らずですが、何か一つ、私の作品を読んでくださった方は、他の作品も複数読んでくれた、というケースが多かったです。

 ありがとうございます。

 最初の1作はロビー活動の一環のお試しとして読んだにしても、それなりに心に刺さるものがあったから、他の作品にも手を伸ばしてくれたのだと思いたいです。


誘拐されし令嬢は、やがて虐殺剣聖と化す  レド(大型獣脚類の一種)さん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888108165


 こちらは、現時点で連載中の作品です。第1話から主人公が●されるというショッキングなスタートですが、かなり肉厚のファンタジー作品で、読み応えがあります。


 マスケッターさんについて。

 この文章を読んでいる人は、レドさんだけではなく、マスケッターさんの名前も当然聞き覚えがあるはずです。

 マスケッターさんは、作品にもよるけど、あの辛口のハイロックさんが「うまいわ」と認める実力者。ランキングも毎回上位でした。賞も何回も取っていましたよね。

 ロビー活動も積極的。書き手、読み手として、今回の企画でもっとも活躍が顕著だったユーザーの一人であることに異論は無いはず。

 そんな実力者ですから、KAC企画の短編作品だけを読むのではもったいない。ということで、もっとガッツリした作品も読んでみたいところ。


太陽のほくろ  マスケッターさん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888487382


 こちらは、1話あたりの文字数は多めだけど、全4話で完結済みの作品です。

 ムッソリーニ時代のイタリアを舞台にしたハードボイルドアクション。

まさに映画のような迫力を楽しめる力作です。


↑上記の文章、他のユーザーに関する言及が多々ありますが、「こんなの中学生でも書けるわ」がオーケーなら、たぶんこのへんは余裕でオーケーだろうという見込み線で書いていますので御了承ください。


 といったわけで、長々と書かせていただきました。

 本来、創作論やエッセイなど書く必要は無いのですが、カクヨム三周年記念企画の終了のタイミングでお疲れさま会、反省会ということで、このエッセイ自体がロビー活動です。

 ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。







 異世界転生チーレムで日の目を見てやるぞ。

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スコップと三世洞見の鏡 kanegon @1234aiueo

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