60……運命の分岐点

***


「ほら見ろ、これで世界は繋がりを強固にしたぜ。さあ、マアトの元に案内しろ」


 イザークは涙を拭って、呆れている様子のネフトの前でふんぞり返った。


「素敵ね。魂だけでも抱けるなんて、神にもできない大道芸よ……愛を受け入れないサアラも考えを変えるわ。ちょっと聞いていて恥ずかしい。あんたよく平気ね」


 ネフトはちょっとだけ羨ましそうに、イザークを眺め、空に奔る流れ星を見ていた。


「ティが笑顔でいるなら、俺の自尊心はどうでもいいんだ! ネフトのお姉ちゃん」


 オレンジ色の球体が浮かんでいる状況に気付いた。白い割れ目がたくさんの巨大な球体は、アケト・アテンの海面で蠢いていた球に似ている。


「なあ、ネフト。この球体、あっちの世界にもなかったか」


 イザークはもう一度球体を見た。切り刻まれているように見えた裂け目には、細い呪術力が巻き付いていた。発光しようとする球体を縛り上げている。


「ティティとの繋がりは消えたか。スカラベ、閉じたな」


「古来より、男も女も、愛が終われば自分の世界へ行くものよ。そして、神の考えは、神にしか解らない。人間が我々に逆らう感情など、どうでもいいの」


 ネフトはイザークをからかうと「マアトの元へ」と爪先を向けた。


(いよいよ神に相見えるか。裁きはむしろ有り難い。ティティを泣かせた代償はしっかりと返して貰う)イザークの運命の分岐は迫っていた。

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