48……塩湖の礼拝堂

「証拠が欲しい。あの夜から手を繋ぐだけでは、口づけだけでは足りない。あんな風に乱れたいって言ったらわたし、変?」


(相変わらずの調子。王女のわたしの手に唇を押しつけると、イザークは頭を撫でてくれたの)


「優しくする。無理に押し入ったりはしねえから」

「ん」


「ティ、舐めていいか」


 ふよんとした二つの膨らみからゆっくりと唇を滑らせていった。ティティは力なくイザークの肩に手を置いて、崩れた礼拝堂を仰ぎ見た。歴史を嘲笑うような、攻撃の痕。ちらちらと夜空が見えて、塩の蒼が紛れ込んでいる。

 孤児院での夜とは違う。イザークはあくまでゆっくりとティティの秘部に顔を寄せると、緩やかに刺激をくれた。寄せる湖の水鏡の波に、イザークとティティの呼吸がふわりと載せられる。


 ……あ、気持ちいい……。


 冷たくなって、また暖かくなって、きゅん、と腰が動くまで。ぴくんと動く度に、ティティに優しい言葉が下から聞こえて来る。秘部を舐め続けているイザークがくち、とティティの其処を指で押し広げた。

柔らかな襞を刺激されて、瞬く間に蜜が溢れて止まらなくなる。一部分が溶けてしまったのではないかと思うくらいに。


「あなたは、此処まで王女だな。気高い四肢をお持ちだ。綺麗に溢れ出してる」


「――え……普通、そうでしょ……ねえ、なんか、じわりと来るんだけど」


「俺を欲しがってくれてるんだよ」


(え? そ、そうなのかな)


 ドキドキでじっと自分の下半身を見詰めていると、「そういう天然、わざと?」と両手を掴まれた。


「仕方ないでしょ! 知らないの……でも、イザークとのこういう……のは好きだよ……」


 モゴモゴと「さっさとしたら?」風味に顔を背けると、イザークは「一度達させるか」と指を添えてきた。その性急な動きに、ついて行けないティティはただぎゅうっと眼を瞑って、両脚を開いて耐える。指が一本から二本、第一関節から奥へ偲ばされたとき、ぴりっと何かが走り始めた。


「――っ……そこ、変になる」


「変にしたくてやってるんだ。変になればいいじゃないか。くすぐったがり」


「意地悪……なんか、くすぐったいというより、涙が出るんだってば」

「涙?」

「……気持ちいい、から……溶けるかと思った……」


 イザークはたまらないといった表情で舌なめずりして見せた。でもそれが妙に似合っていて、ばっと服を脱ぎ捨てた四肢すら、眩しく映ってしまう。

 腰に巻いていた布をはぎ取り、前を寛げさせると、立派にそそり立った怒張を構えて、指で誘った。


「ティティから、来い」


 口調にはどこかにやはり王子風味の尊厳がある。ティティの四肢は教えられた以上に熱くなっていく。

 あれがまた、ぬくりと……。


(あ)蜜が溢れて垂れた。太ももの感触にティティは震えあがってしまう。


「なんか、神聖な気持ちになって来た。ん、行きます」


 大きく開いた足の間。灼熱を含むことすら、もう躊躇はしない。それはティティとイザークの違いなのかも知れなかった。早く、受け止めてあげたい一心は、痛みを通り越して、奥深くまでイザークを突き刺した。



「ん、あァ……っ……やん、もう……」


 灼熱はティティのなかの突起を全て塗り替えようと颯爽と蠢く。ひくん、と其処が疼いて、ティティは顔をイザークに擦り付けて腰を浮かせた。イザークが胸をきゅきゅっと悪戯する速度に合わせて、浮かんだり沈んだりを繰り返す。


 わかる。こうすると、すごく、イザークが近く、なる。


「はぅっ……ん、あ、……動いちゃ、いやぁ」


「貴方が自由に動いてるんだけどね」言葉にティティは目元から耳までを赤くする。


「違う。イザークが動かしているの。そこ、きゅきゅってやるから、引っ張られ……あーん、気持ちい……」


「罪作りな王女だな! そこで、そういう事をな……っ」


 ――深い……奥まで、来ちゃう。ううん、来て。いや、来なさいよ!


 想いを載せて、ずくっとした痛みなど彼方へ吹っ飛ばして、ティティは眼をみひらいた。


「あ、あああああああああ」


 勝手に動く四肢はぴったりとイザークに合わせて叛乱を起こしている。次々と訪れる裁きの波はどこまでも甘く、時にはイザークの親指を噛んだりして乗り切って。


(どうしよ……こんなの、覚えちゃったら……ずっとずっとこのままでなんて考えちゃう)


「俺が融かされそうだって……やばいな」


 引かれた腰がまた押し込まれる瞬間をわくわくと待つ、イザークに染められた四肢はもういうことなんか聞いてくれない。二人で礼拝堂に寝転がって、足をしっかりと絡め合った。


「ぎゅ」


 口に出して、足でイザークの足を捕まえた。ずくずく、と内部を揺らされて、無意識に舌なめずりを繰り返す。気持ちいい、とてもじゃないけど、身体全部が気持ちいい。


 瞬間、熱湯を浴びせられるような熱い奔流がティティの下腹を何度も撃ち抜いた。


「んっ……揺れる……っ!」

「すげー……出てる、から……ティが押さえつけるからだぞ」


 最後の律動が終わるまでイザークはティティを揺さぶり、やがて離れた。


「またそんな呆けた顔して。ティ、戻って来い……つか、押し込められるとは……俺、割と冷静なのに……な」


 イザークが何かを告げている。ティティは足をまだだらりとさせたまま、起き上がることが出来ず、呆然とイザークを見てただ眼を細めていた。


「手、繋いで」

「お安い願いだな。……ああ、こう?」


 ワガママを言って、手を繋がせると、ふう、と可愛い吐息を吐き出して、正気に還った。


 礼拝堂の窓から、白銀の光が漏れている。小さな衝撃を超えて、ティティがイザークの全てを受け入れた瞬間すら、夜の光のない残酷な世界と愛を一緒に噛み締めた気がした。


「どこへも、行かないよね。ずうっと、一緒よね」


ティティの指は震えていた。


「行かねえよ。どこにも」イザークもまた何度も言い含める。


 潤んだ瞳の端に塩湖が映った。


「いずれは人間も、塩の柱になる。心と体を同時に結びたがる生きもの……か。ネフトのやつ、とんだお膳立てを」


 最期の夜。

 愛の交わしは、少しだけ罪の色と、愛に包まれていた。

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