その3 国王の依頼、または父親からのお願い
「それでは叙爵の件は宜しく頼む。それで次の頼みなのだが、失礼だがヒロフミ殿は実は結構お若いと聞いたのだが」
えっ?
ちょっと考えて、答える。
「確かに年齢でいえば49歳ですが、この世界の1年はミーラクの1年より長いのです。この世界で仕事を引退する年齢は普通65歳程度なので、それなりの年齢ではあると思いますが」
「ジーナによるとミーラク年齢に換算すると73歳だと言っていたぞ」
ジーナめ、早々と時間の違いを確認していたか。
ちなみにミーラクの年齢は3で割ると大体日本人の見かけ年齢と一致するようだ。
つまり73歳というのは日本の年齢で24歳程度、確かに若者だ。
「おそらくこちらの世界の人間の方が短命なので、その分早く加齢の影響が出るのでしょう」
何故この話題になったかわからないまま、私はそう応じる。
「見かけや肉体上の加齢は魔法でどうにでもなる。ミーラクの年齢で73歳相当というのは本当だな」
「それは間違いないでしょう」
一日の長さはほぼ同じ、ミーラクの1年はだいたい243日。
だから機械的に換算すれば、
49×365.25/243=73.6512……
そんな訳でまあ間違いでは無い。
「さて、話は変わるがシェラの事だ」
頼みの内容にふれないまま話題が変わる。
そうは見えないけれど、ならさっきの叙爵の件も酔った上での話なのだろうか。
「ヒロフミ殿と知り合い助けて貰ったのもシェラが結んだ縁だ。それに数日でもシェラと一緒に過ごしたのだから少しはあの娘の事もわかっていると思う。
ヒロフミ殿はシェラをどう思う?」
「いい子ですよ。性格はちょっと控え目で、でも頭は良くて。欲を言えばもう少し我が儘でもいいと思うのですけれどね」
「そうなのだ」
「我が子の中では器量も頭も一番上だと思っているのだ。これは私だけの意見では無く、
だがあの子は自分の立場を考えてそれを表に出そうとしない。おそらくこの国ではあの子の能力も意思も潰してしまうことになるだろう」
シェラが目立ちすぎると、国を割ってしまう事になりかねないのだ。
彼女自身にその気はなくとも彼女を担ぎ上げる一派が出てくる可能性がある。
特に国内主流派に少しでも反感を持つ者を集めてしまいかねない。
控え目にしている今でさえ、王弟から担ぎ上げられそうになった位だ。
シェラもそれをわかっている。
「国外とかにいい相手はいないんですか」
「帯に短したすきに長しというところだな。相手が酷かったり、国情が良くなかったりだ。
さてそこでだが、シェラが興味を持てそうな場所があって、なおかつシェラ自身が好意を寄せている相手がいるとする。王家では無いがれっきとした大貴族で問題無い。しかも政治的な問題も起きそうに無い。
そういう相手がいたら、親としては快くというか積極的に送り出してやりたいと思うのだが、ヒロフミ殿はそう思わないかな」
何か予感がする。
背後の逃げ道をビシバシ閉じられているような予感だ。
危険予知魔法こそ発動しないが心情的にはかなりやばい。
年齢の話も叙爵さえも全てここに繋がる伏線だったわけだ。
酔っ払っているなんてとんでもない!
「見た目にも釣り合わない相手だとまずいでしょう」
「それ位魔法で何とかなる。違うかな」
違わない。今の私やシェラなら細胞単位での身体若返りも可能だ。
「勿論本人自身の意思を最大限に尊重する。今の学校に通いたいならそのまま通っても構わない。どうせ今のシェラなら何処だろうと自由に魔法で移動出来る。回数も距離もほぼ制限無しのようだからな」
確かにシェラなら移動魔法もイメージの力で最小限の魔力で使用出来る。
ここ日本とアトラスティアの学園を往復なんて軽いものだ。
「何ならアミュも一緒に連れて行けばいい」
シェラの魔法は移動自由だから……以下省略!
「確認のため繰り返そう。地位的には相手が辺境伯だから問題無い。国から離れるので政治的にも問題無い。シェラが興味を持てそうな新しい知識や考え方が豊富にある。生活水準も確認済み。
それでシェラ自身が相手の事を好いていたとしたら、何としてでも送り出してやりたいと思うのは親として当然だとは思わないか」
それでも最後の抵抗はしておこう。
「私としては、シェラもアミュも娘か孫のつもりだったんですけれどね」
「その辺は異世界だから常識が違うという事で諦めて貰おう。それに政略結婚の場合は、40代と150代の結婚なんて事も往々にしてあるからな」
それは地球でも似たようなものです。
なお繰り返すけれど、外見年齢的にはアトラスティア年齢÷3で地球年齢位だから、参考まで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます