その2 遊園地へお出かけ

 昨日も思ったのだけれども、このペンションはお安い割には食事がいい。

 夕食はしっかりフルコース料理だし、朝もなかなか。

 見た目にも綺麗にハムだのソーセージだのオムレツだのサラダだの並んでいる。

 しかもパンは食べ放題だ。

 こういう機会でもなければ一生来ることは無かったんだろうなと思う。

 またシェラとアミュを連れてきてもいいかな、そう思ってふと気づく。

 またの機会があるのだろうかと。


 まあいい、今を楽しもう。

 シェラもアミュも美味しそうに食べているし。

 2人だけの時より笑顔が増えて私も大変嬉しい。

 でもアミュ、お前そんなに食べて何処に入っているのだ。

 確かに腹が膨れてるのは見てわかるけれど、それ以上に食べているだろう!


 食事が終わったら出かける準備。

 皆さん日本風の格好に着替えて貰う。

 ちなみに今は皆さんパジャマ姿だ。

 今回は女性陣の着替えはシェラやマリエラ、ジーナに任せる。

 男性陣はまあ何とかなるだろう。

 結果、多少のサイズの違いはベルトで誤魔化してなんとかセーフ。

 皆さん大きめに買ってきて正解だった。


 ペンションの14人乗りマイクロバスに乗って遊園地へ。

「この乗り物は便利ですね。あの人の魔法で動いているんですか」

「この世界には魔法は無いようです。代わりに科学というものが発達して、色々な者を作り出して生活に役立てています。科学とは私達の世界でいう錬金術のようなもので、自然がどういう構造によって動いているかを探求する学問です」

 ジーナが皇太子シャープールの疑問に答える。


 王族の皆さんは日本語を読んで何とかアトラ語に直す程度の知識しか渡してない。

 なのでこういった説明は私、シェラ、マリエラ、ジーナの4人の担当になる。

 ちなみにジーナが王様、王妃様、皇太子、下2人のグループ担当。

 マリエラが残りの王子王女担当となっている。

 皇太子に国王一家側を2グループにわけて貰って、それに担当者を付けた形だ。


 これは2人が『シェラ達と他の王族の皆さんは仲が良くないのではないか』と思っていたことに由来する。

 実はそんな事はないようなのだけれど。

 朝に王や王妃から聞いた話の内容はマリエラ達にも話してある。

 それにマリエラ達はシェラ達と同じ部屋なのでその辺の話も色々聞いたらしい。

 でも担当は結局そのままになっている。

 決め直すほどの事案もないので。


「ほほう、それならこれを操るのには魔力は必要無いと」

「ええ。そのかわり操縦には訓練が必要だそうですけれど」

「この乗り物は一般的なものなのですか、それとも特殊なものなのですか」

「この世界では一般的なもののようです。自動車と言って小さいものから大きなものまで色々存在しています。おじさんも小さいのを一台持っています。あちこちを走っていますから、まもなく色々な種類を見ることが出来ると思います」

 マイクロバスが走り出す。


「速い! でも馬車と違ってガタガタ揺れないね」

「この自動車が走るため専用に道路を平らにしてあるからね。それに車輪もゴムという柔らかい物質と空気を使って揺れないようになっているの」

 マリエラも王子か王女相手に解説中のようだ。


 まあそんなグループ分けのおかげで、私、シェラ、アミュは3人で別グループ。

 シェラやアミュはどう思っているかわからないが、私としては嬉しい。

 まあこのグループ分け、マリエラとジーナが例の『貰ってやって下さい』の為に企んだのかもしれないけれど。

 それでも2人と遊べる機会はこれが最後かもしれない。

 だからこそシェラとアミュには思い切り楽しんでもらうつもりだ。

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