その5 食後の団欒中

 食事の後は風呂へ入るなり早めに休むなり自由時間。

 私とシェラはアミュとキッズルームで機関車トー●スのDVD鑑賞。

 そうしたらまずジーナとマリエラがそれぞれパソコンを持ってやってきた。

「2人とも自分の部屋で作業出来るだろ」

「うーん、アミュちゃんを見ながらの方が気分が乗るから」

「べたっと座れるのは楽だからな」


 そんな事をやっていると、それぞれ暇な王子王女がのぞきに来るわけで……

 気がつくとトーマスDVDの鑑賞会になってしまった。

 なおここにいる面子は一番下でシェラよりちょい下くらい。一番上の皇太子が大学生くらいである。

 機関車トーマスの対象年齢層より大分上だと思うのだが……

「話は単純ですが結構面白いですね、これ」

「動いている絵本を見るのは初めてだ」

「続きは、ねえ」

 なかなか好評である。

 待てよ、そういえば適齢に近いのがいたな。


「何なら王妃のところから2人、連れてきたらどうかな。あの辺りの年齢ならこのDVD、結構楽しめるだろう」

「そうですね、なら私が誘ってきましょう」

 皇太子シャープール、なかなか腰が軽い。

 すぐに2人を連れて戻ってきた。

「お、絵が動いている」

「声も出ている」

 2人とも来てすぐ気づいたようだ。

 前に座って見始める。

 そう言えば明日行く遊園地、トー●ス関係の展示物もあったな。

 ひょっとしてそのせいでここにもトーマ●のDVDがあるのかな。

 いずれにせよ明日遊園地に行くにはちょうどいい。


「そう言えばこちらの2人は何をなさっているんですか」

 大学生くらいの第一王女がマリエラのパソコンを覗き込む。

「これは銀行的な商売の一種ですね。ある国の通貨と他の国の通貨を買ったり売ったりして、利子や価値の上下で商売をする感じです」


「通貨の価値は金等で決まっているのではないのですか」

「この世界では金本位制はかなり前に終わっているんですよ。しかも主要な国だけで何十カ国もあります。その国の産業等の国内情勢や他国との国際情勢によって、通貨の価値が常に変動しているんです。変動相場制と呼ばれていますけれど」


「難しい事をなさっているんですね」

「理論は難しいですが、やっている事は簡単ですよ。安い時に買って高いときに売る。私は少しだけこの方面の未来予知が出来るので、いい儲けになります」

「それでも難しいですわ」

 まあ確かにFXの理論なんて変動為替相場を理解していないと難しいだろう。

 アトラスティア及び周辺諸国は金本位制で、まだ変動相場制まで行っていない。


「こちらは何をなさっているんですか」

「この世界の社会体制を色々調べて、レポートをまとめてる」

「どれどれ」

 皇太子シャープールもやってきた。

 画面を覗き込んで驚いたように言う。

「この画面に出ているのはアトラ語じゃないか」


「アトラ語で文章を作れるように少しいじった。だからこんな感じで書面も作れる」

 ジーナはモバイルプリンタの電源を入れる。

 ジージーという音と共にプリンタが紙を吸い込み、印字済みの紙を吐き出した。

「こんな感じで印字済みの文章が何枚も作れる。ただし中身は前回ご迷惑をおかけした内容なので、もう少し調査の上完全なものにしてから提出したい」


 皇太子シャープールは読みながらにやにやしている。

「なるほど、あの時やり合った内容の政治体制はこの世界に実在したのか」

「厳密にはこの世界はあの理論の少し先を行っている。この国、ニホンというがここがまさにそうだ。既に貴族は名前のみになり、王家と国王は象徴としてのみ存在している。国王が存在する最後の体制だと思われる」


「今度提出するときは気をつけろよ」

「御意、殿下とシェラの手をわずらわせないよう注意する」

「参考までにこのレポート、貰ってもいいかな」

「殿下なら。ただし部外秘で」

「心得た」

 おいおいと思いつつ私はそんな会話を聞いている。

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