その6 やっと一日が終わりました

「うう、気持ち悪い」

 助手席でマリエラが口を押さえたり深呼吸をしたりしている。

「無茶な食べ方をするからだ」

「でもいくら食べてもいいなら、いっぱい食べないと損じゃな……ううっ」

 まあ程度の差はあれど皆さん食べ過ぎ状態だ。

 私も残り物を片付けたので結構辛い。


 家近くの駅まであと3キロの案内板を通過。

「もう少しだ。やばいと思ったら止まるから申告しろよ」

「あとで消化吸収の魔法を開発しよう。この世界の知識を調べればなんとかなるだろ……ううっ」

 車内に異臭がしそうなので全部の窓を半分開けた状態だ。


 何とか誰も粗相することなく家に辿り着く。

「取り敢えず寝室に布団を敷いておく。風呂は後で沸かすから勝手に入ってくれ」

 そんな訳で2階南側の部屋へ行き、アイテムボックスから布団2組を出す。

 シーツをかけて枕をセットして準備完了だ。

 取り敢えず私以外は全員同じ部屋でいいだろう。

 これならアミュも寂しくないだろうし。


 私のマットと寝袋は畳んで隣の部屋へ移動。

 ここにもう一組布団を出しておく。

 後で寝るときにシーツ等を敷けばいいだろう。

 とりあえず風呂の準備をしに下へ。


 リビングで4人に声をかける。

「寝る準備が出来たぞ」

「アミュ疲れた」

「なら先に寝ましょうか」

「私も寝る。動きたくない」

 ジーナを残して3人が階段へ。

 残ったジーナは買ってきたパソコンをセットアップ中だ。


「大丈夫か、ジーナ」

「何とか。取り敢えずこれを使えるようにしないと」

 あまり大丈夫では無さそうな感じもする。

「無理はするなよ。あとネットのパスワードはこれ」

 メモに書いて渡しておく。


 まあ私も結構無理矢理動いているんだけれどな。

 でも身体が大きい分少し腹の調子がおさまるのも早いようだ。

 取り敢えず風呂を洗って、沸かしておくか。

 最近の風呂はスイッチを入れっぱなしにしておけば湯量も湯温も保ってくれる便利機能付きだ。

 独りの時はそんな機能使う事は無かったけれどさ。

 そんな訳で浴槽をざざっと洗って、蓋をしてスイッチを押しておく。

 あとは予備のバスタオルを持ってきて洗面所に置いておけばいいかな。


 でも風呂の使い方、ジーナやマリエラはわかるかな。

 シェラから知識を引き継いでいればいいけれど。

 まあその辺はもう仕方無い。

 洗面所の棚にタオルを置いたら眠さが増してきた。

 取り敢えず一休みしようと思って、私は二階の西側の部屋へ向かう。

 今日の私の寝室だ。

 シーツを被せたところで私の体力のバッテリーが切れた。

 もういいや、このまま寝よう……


 ◇◇◇


 目が覚めたら布団の上にそのまま倒れている状態だった。

 外はまだ暗いので、時間を知る為にスマホの電源を入れる。

 午前3時だった。

 誰も入っていなかったら風呂に入ろうかな。

 そう思って着替えを持って下に降りる。

 リビングの電気がついていて誰かがパソコンに向かっている。

 まだジーナがやっているのかと思ったらマリエラだった。


「大丈夫か。明日というか今日は車で長時間移動するけれど」

「取り合えず動けるようにはなったしね。取り敢えず儲けられる分は儲けておかないと気が済まないの」

 その台詞に画面を見ると、FXの取引画面になっていた。

「あまり無理しないでいいぞ」

「でもそれじゃおじさんに申し訳無いし」

 えっ?


「別にお金はある程度余裕あるから大丈夫だよ」

「余裕があってもやっぱりお金を使わせていることは申し訳無いと思うの。おじさんにとってはシェラ達の事も国王や私達の事も本来は関係無い事だしね」

「その辺は気にしなくていいよ。私が好きでやっているんだから」

「でもその辺を気にしないと商人なんてやってられないしね。まあだからこれもおじさん風に言うと、『私が好きでやっているんだから』になるのかな」

 なるほどなあ。

 義理堅いというか何というか。


「ありがとう。でも無理はするなよ、本当に」

「わかってます。あと一勝負したら寝るから」

「わかった」

 そんな訳で私は風呂場の方へ向かう。

 中の気配は……魔法で調べて無い事を確認。

 取り敢えず風呂に入って、出た後もマリエラが起きていたら寝せるとしよう。

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