その2 再び異世界へ

『危険! 危険! 危険! 二時間後!』

 危険予知魔法の発動で飛び起きる。

 なお寝室は未だベッドに2人、その横に私の布団という配置だ。

 そして私と同時にシェラも身を起こした。


「来ましたね」

「ああ」

 アミュを起こし、歯磨き、着替え等を行う。

 シェラとアミュはここへ来た時の服装、私はこの前と同じチノパン、襟のある綿シャツ、ウィンドブレーカーという服装。

 細かい装備は既に私とシェラのアイテムボックスに入っている。


『危険! 1時間後!』

 そう魔法の宣告時間が変わったところでシェラが移動魔法。

 カドゥ砦に近接した別空間に移動した。

「まずはこの砦全体の守備兵や魔道士の配置を確認しよう」

「そうですね。小さい砦で助かりました」


 そんな訳で1階から全部回って確認する。

 1階は表入口から入ったすぐの場所に守備兵2名、裏口に同じく2名。

 2階は魔道士部隊と守備兵の控え室と休憩室で、守備兵4名と魔道士8名。

 地下の地下牢入口の見張所を兼ねた控室に魔道士4名という配置だ。

 牢のひとつに王、

 次の牢に王妃、

 更に次の牢に皇太子(第一王子)、

 王の向かいの牢に第一王女、第二王女、第四王女、第五王女の4人、

 その隣の牢に第二王子、第三王子の2人という配置だった。


 だが向こうの動きが妙だ。

 守備兵も魔道士も明らかに警戒態勢を敷いている感じがする。

「魔道士の一人が何処かと常時通信魔法を展開しています。何かあったらすぐに相手先に察知されます」

「向こうも危険予知魔法持ちがいたかな」

「予知系魔法の持ち主は少ないのですが、どうも何らかの襲撃の可能性があると気づかれた模様です」

 なお私の危険予知魔法の反応はこの世界に来てから途絶えている。

 私達に気づいたという可能性は低そうだ。


 ここの全員を睡眠魔法で眠らせる事は可能だろう。

 ただ王以下を連れて立て籠もれる手頃な場所があるだろうか。

 何せ王宮で襲われた位だ。議場も安全とは言い切れない。

 敵に優秀な手兵がいるのは間違いないのだ。


「どうする、一度撤退するか」

「撤退しても状況は良くなる可能性は低いと思います」

「でもこっちはシェラと私の2人だけだ。人数が少なすぎる。このまま王宮に連れて行っても相手が力押しで実力行使に出たらまずい」

「そうですね……」

 シェラは少し考えている様子。


 考えてみるとやはり国王等を匿う場所を確保しなかったのはまずかった。

 何せ一度王宮からさらわれている訳だ。

 守りが堅いはずの王宮でさえそうなるなら、この世界には安全な場所は無い。

 一度出直して、向こうの世界で国王一家を匿う場所を確保しておくべきだろう。


 約1分後、彼女は小さく頷いた。

「なら一度撤退して、味方を増やし準備しなおしましょう」

 確かにそれが確実だろう。


「どうする。皇太子辺りを引き抜くか?」

「この中から誰かを助けた場合、残りの方に万が一の事があるとまずいです。ここは申し訳無いですが、学校での私の友人達に頼もうと思います」

 なるほど。

「何人だ?」

「候補は2人です。2人とも信頼できますし、この魔法の力を渡しても大丈夫だと思います」


 私にもシェラの案は妥当なように思えた。

 まあ最悪の場合、私1人で敵の首脳部を消すことも不可能では無いだろうけれど。

 王家に犠牲者が出たらシェラが悲しむだろうから、最後の手段だけれどさ。


「取り敢えず学校があるパルティアへ移動しましょう」

 そんな訳で再びシェラの魔法で移動する。

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