第二話 敵の影と私達の魔法

その1 逃走します

 服や靴、バック等身の回りの物一式。

 絵本や図鑑等アミュやシェラが読むもの一式。

 私が寝るための布団一式。

 更に今日と明日の分の食品を軽自動車に無理矢理詰め込んだ感じで帰ってきた。


「さて、全部玄関まで運ぶぞ。お手伝いお願い」

「わかった! アミュ頑張る」

 三人で車と玄関を何度か往復して荷物を運び込む。


「はいお疲れ様。それじゃその辺の本を読んで休んでいて」

 図鑑や絵本は帰り道にあった大手古本屋チェーンで購入したものだ。

 どれも本来は小学生用。

 でも図鑑は写真入りでシェラがこの世界の事を知るためにもちょうどいい。

 ネットは調べるには便利だけれど知識を一覧形式で見るには不便だから。

 なお車の中でシェラからアミュに日本語の知識を簡単に伝えて貰った。

 絵本や図鑑を読める最小限程度なら、アミュに魔法で伝えても大丈夫らしいから。


 さて、私はささっと荷物を各部屋に運び込み、風呂掃除。

 なお今日の夕食はお弁当と出来合いの惣菜なので手間はかからない。

 物だけ運んで風呂掃除をすれば一通り家事は終わりだ。

 さて、それではまた魔法を試してみようか。

 水が出る魔法は出来たから、今度は氷も出来るかな。

 やってみたらあっさり氷の柱が出来た。

 魔力を最小限度で調整したので大きめのつららサイズだけれども。


 この調子なら結構色々な魔法が使えそうだな。

 流石に攻撃魔法はここでは試せないから他の魔法。

 危険予知なんてのがあった。

 そんな危険な事は無いと思うけれど、試してみる。

 うん、成功したかどうか不明。何せ何も感じない。

 まあ危険で無いのはいいことかな、そう思った時だった。


『危険! 危険! 危険! 二時間後!』

 何だこの感覚は!

 知識を探ると、これこそ危険予知魔法が危険を察知した状態のようだ。

 このままの状態では二時間後に危険が訪れるという事らしい。

 これはシェラに相談した方がいいだろう。

 風呂場から出て急いでリビングへ。


「シェラ、相談がある」

 そう言ってアミュの事に気づく。

 アミュを怖がらせたらまずい。

 そう言えば魔法音声なんて魔法があったな。


『シェラ、危険予知の魔法を使ってみたら、二時間後に危険という結果が出た』

『わかりました。すぐ移動しましょう』

『どうして移動するんだ?』

『危険予知の魔法で察知した危険は、その場でそのまま居る場合に危険になる可能性が高いという事です。ですのでまず場所を変えて様子を見るのが一般的です』

『わかった』


「アミュ、ちょっとまたお出かけするそうです。一応着替えと、あと買ったお弁当なんかも一緒に持って行きましょう」

「アミュはこの本をまだ読みたい」

「ならその本も一緒に持って行きましょうね」

 私はその間に風呂のガスを消し、家の戸締まりを再確認して、弁当と惣菜の入ったスーパーの袋に割り箸とスプーンを詰め込む。

『一般には危険予知が出た後、できるだけ早く、出来るだけ遠くに行くことによって危険を逃れる事が出来ると言われています。ですので早く』


 そんな訳で弁当と着替えを持って車へ。

 遠くへという事で取り敢えず高速道路目指して走り始める。

『シェラは危険予知の魔法は使えないのか?』

『私は出来ないです。私が使える魔法は心理操作系統と炎や熱系統の魔法です。お父さんは?』

『風呂場で水を出す魔法と氷を出す魔法は使ってみた。あとは危険予知の魔法を使ってみたら、こんな結果だ。まあ魔法のミスならいいんだけれどさ』

『予知の魔法の失敗は、予知が聞こえないという形なんです。ですから危険と感じたという事は魔法が成功したと思っていい筈です』


『この場合、危険から逃れたかどうかはどうすればわかるんだ?』

『一時間位移動したらもう一度魔法をかけてみて下さい。走りながらの方がいいです。危険を感じなくても二時間位ならできる限り移動し続けた方がいいと思います』

『わかった』


 出来るだけ遠くにという事は高速でひたすら走ればいいだろう。

 ここから出て二時間走り続けられるといったら、圏央道に出て常磐道か東北道を北上なんて感じだな。

 危険を感じなくなったらホテルでも泊まって、明日あたり帰ってくればいい。

 ビジネスホテルの素泊まりならどこか空いているだろう。

 街中の方が宿も取りやすいし安全かな。

 そんな事を思いながら車を走らせる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る