第188話 再会

 ぼんやりと見知らぬ天井を眺めていた。といっても天井だけをじっくりと眺めていたことがあるわけではないので本当に知らない天井なのかははっきりはしていない。正確には見慣れない、なのかもしれないからな。


 それにしても俺は夢でもみていたのだろうか。今までもたまに見ていた登場人物だったのだがこれはダンジョンに残っていた記憶だったのだろうか。


「レイノアール…か」

「はい」


 まさか返事が返ってくると思っていなかった俺は驚いて飛び起きた。そこには俺を見下ろしているレイノアールが立っていた。どうやら俺はベッドに寝ていたようだ。それは起き上がった時にすぐに分かったが、やっぱり知らない部屋だったみたいだ。室内の様子が知らないものばかりで構成されている。そもそもレイノアールがいる時点でここはまだダンジョンの中なのだろう。ということはだ、ここで今から俺の願いが叶うってことなのだろう。


「攻略おめでとうございます。そしてありがとう…」


 レイノアールが軽く頭を下げ俺にそんなことを言ってくる。おめでとうはわかるがありがとうってちょっと意味が分からない。


「うををををををををををーーーーー!! 死ぬかと思ったわっ」


 そこへ大きな声が突然響いた。聞き覚えのある健太の叫び声だ。そこに現れた健太の服は一部分が大きく裂け、血が付いていた。


「怪我してるのかっ?」

「ん…よっすーーーーー! そういうよっすーだってぼろぼろじゃないかっ」


 駆け寄って健太の傷を見てみるが血がついてたのは服だけだったみたいだ。そのことに少しだけ俺はほっとした。


「お互い大変だったみたいだな」

「ほんとだよっ 一人になるなんて聞いてないしな!!」


 いや…誰が教えてくれるっていうんだよ。レイノアールなら作った本人だからわかっていただろうけど普通教えてくれないだろう。


「ドーナツがあああああああああっ」

「うをっ?」


 再びそこへ聞きなれた声がした。ファーナさんだ。ドーナツって…何を言いたいのかよくわからないけど。無事に会えたことにほっとする。


「ちょっ…ファーナさんも血が」

「おいおいそれ大丈夫なのか…?」


 大きな声で叫んでいたくらいだから大丈夫だとは思うが健太が心配するのもわかる。ファーナさんは胸のあたりから腰に掛けて血まみれだったのだ。


「痛かったけど痛くないよ! それよりもドーナツだよっ」


 ファーナさんが腕を振り回し暴れるので首のあたりから何かがポロリと足元へと落ちた。その足元に落ちたものを拾い上げると見覚えのあるアクセサリーだった。たしか…身代わりの首輪だったと思う。つまりファーナさんは身代わりされるほどのダメージを受けたってことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る