第174話 ミネとリノ3
「目的は、何?」
リノが冷たく男たちへと言葉を向けた。私は魔法の維持で必死。周りが暑いので氷なんてあまりもたなくて溶けてきてしまう。
「なんだ嬢ちゃんも仲間に入りたいのか?」
「だから、目的は、何?」
「まあたしかに俺たちに協力したほうが儲かるかもだしな。ひどい奴らだなぁ~」
「目的は?」
男の言葉に耳を貸さずにリノはただなんでこんなことをしているのかを聞いている。どうやら男たちは私たちが仲間に入りたがっていると勘違いしているみたいだけど、面倒だから放置しておく。都合もいいしね。
「ほらあの子領主様のとこの子だろう? 捕まえたら稼げそうじゃん??」
「浅はかな…」
「ダンジョンこもっているよりきっと稼げるぜぇ~?」
足元の氷が緩んだ男の1人がリノへと近づいていく。もちろんわざと緩めたのだが男にはわかっていなかったみたいだ。ニヤニヤとしたいやらしい顔のままリノの傍へとやってくるとそのいやらしい顔をリノへと寄せた。
「へぶぅっ!?」
近づいてきた男にジャンピングシューズで飛び上がってそのまま頭突きをリノがかました。ざまあ見ろだ。飛び越えざまにさらにリノの杖で思いっきり殴りつけられた男はその場で崩れ落ちた。
「なっ こいつらぁ~!!!」
「くそっ 動かねえ足っ」
「とりあえず、縛るね」
「お願いっ」
崩れ落ちた男をリノが何か所もロープで縛りあげる。簡単にほどかれたり切られたりスキルを使われたりしたら困るからだ。ロープで縛りあげるのが終わるとリノは再び冷たい視線を残りの2人に向けた。
「大人しく、縛られて? 痛くない、ほうが、いいでしょ??」
「……」
「……っち」
残りの2人は大人しくリノに縛られていた。ただ何を考えているのかまでは私達にはわからない。意識を失っている人はともかくこの2人はずっとリノを睨みつけていたのだ。
「…ん、終わり。じゃあ、運ぶね」
「わかった、見張っておくね」
リノは力があるとはいえ小柄なので1人づつしか運ぶことが出来ない。意識のあるうちの1人を抱えるとタッチパネルを操作し男に触れさせた。一度に男たちを外に出してもいいのだけど、外で逃げられてしまうと再び捕まえるのが困難になるのでこの方法にしているのだ。その間私が残りを見張っている。私じゃ運べないんだから仕方だない。近くの村に引き渡すのでここからだとどうだろう…往復30分はかかるだろうか。この待ち時間が退屈だ。
「ねえ、なんでまっとうに稼ごうとしないのよ」
「ああっ?」
「お互い暇でしょう? 雑談くらい付き合いなさいよ」
「…っち。 楽に大金が稼げそうだったから、それ以外に理由がいるか??」
「ふぅん…そういうもん?」
犯罪者の気持ちは理解できない。捕まってしまったら何にもならないのにね。この時私は油断していたんだと思う。意識を失っていた男が目を覚ましているなんて気が付いてもいなかったのだ。もしかすると会話をしている男は気が付いていて私を引き付けていたのかもしれない。
「あっ!! ちょっとそっちは…っ」
目を覚ました男はいつの間にかロープから逃れていてその場から奥へと走り出したのだ。ファーナが去り際に仕掛けた罠があるほうへと…私も気が動転してたんだと思う。魔法で足止めをしないでその後を追いかけてしまった。
「うわああああっ?!」
「え、ちょ…っ」
いくら犯罪者とはいえ目の前で危険にさらされている人を見捨てることは出来なかった。ファーナの仕掛けた罠は落とし穴だったようで、そこへ落ちていく男へと私は手を伸ばした。
「『フライト』はっ?」
「な、ない!」
落とし穴の底は真っ暗で深さが全く分からない。私の力ではいつまで支えられるか…
「うう…重いっ」
「は、離さないでくれーーーっ」
男は必死で私の両手をつかんでいる。その男の重みにじりじりと引っ張られ私の体も落とし穴のほうへと引かれ始める…リノ、早く帰って来て!
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