第130話 状態異常

 扉の先を少しだけ確認をして帰ることにした俺達は健太が先ずは扉を開け中へ踏み込んだ。その時扉を開けた瞬間に聞こえてきたもののせいなのかいきなり健太が倒れた。


「あああああああああ~~~~~~~~~~~~~っっ」


 叫んでいるような泣いているような悲しげなでも耳障りな声。慌てて健太に駆け寄るって確認するとどうやら健太は寝てしまっている様だった。ほっと胸を撫で下ろしみんなにまだ中へ入らないように言おうと振り返ろうとしたのだが、体が動かない。


「は、入るな!」


 その場でそれを言うだけで精一杯だ。すぐ後ろからリノがまさに入ろうとしていたみたいで驚いた声を上げた。


「ケンタは、どうしたのっ」

「寝てるだけだ」

「寝てる…ヨシオは、なぜこっちに、戻らない?」

「動けなくなったっ」

「「「!!」」」


 姿は確認できないが後ろで息を呑むのがわかる。


「一定の距離…または、音量? あの声のせい? …少し試す」


 そう言うとリノがすぐ近くに来るのがわかった。見える位置に来ると耳を両手で塞いでいるのがわかる。キョロキョロと周りを見て状況を確認しているみたいだ。入って右のほうをじっと見ているからそっちに何かがいるかあるのだろう。少しすると視界からリノが消えた


「ん…右に、魔物。それが泣いてる。多分、状態異常」


 なるほどその魔物の声を一定の距離か音量で聞いた俺と健太が状態異常の状態になったということか。とすると健太は睡眠で、俺は麻痺ってところか。リノが耳を塞いで大丈夫だったところを見ると距離ではなく音量。耳を塞げば何とかなるみたいだ。だけど両手を塞ぐわけにも行かないので戻ってから対策を練る必要があるな。


「ヨシオ、まずこっちに、戻すね。ミネ、私の耳塞いで、そのミネの耳を、ファーナが塞いで」

「え、それじゃあ私は塞げないけどっ」

「大丈夫、距離的に、ファーナは丁度扉の外、だから」


 リノの指示に従ってそれぞれが耳を塞ぎあっていると思う。見えないのでよくわからないんだよな。その先頭のリノが俺を引っ張り扉の外へと連れ出してくれる。次に3人は健太を引っ張り戻した。

 麻痺は中々厄介だな。俺に耐性がないのか効果時間が長いのかわからないが動けるようになるまで10分くらいそのままだった。俺が動けるようになる少し前に健太が起きたが、怖いことに睡眠ぐらい強い衝撃でも与えれば起きるんじゃないかとリノが試そうとしていたのをミネとファーナさんが止めていた。とりあえず俺が動けるようになるまでは放置で、それでも起きなかったら健太はリノに思いっきり殴られるところだったみたいだ。命拾いしたな健太…


 

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