第75話 ソロ活動3日目

 今日は昨日集めただけでさっさと帰ってきてしまったのでまずは鱗の『合成』から始める。やっぱり30分集めた分だと大体完成品は3個作るのが限界だった。これ以上数が欲しかったらもっと集めないといけないが、30分杖を振り続けるというのも中々の運動量で疲れるのだ。繰り返しているうちに振っていられる時間が延びてくることもあるだろうが、現実的に考えて年単位かかる代物だろう。よくあるアニメや漫画の修行とかで1ヶ月とかで強くなるキャラクターとかいるけど、あれはまさにアニメや漫画といった架空の中でだけの話だ。どう考えても俺には出来ることではない。


 鱗の『合成』が終了したので俺はタッチパネルを操作しダンジョンの中へと入った。昨日見たダンジョンの中側のタッチパネルの横にあったスライドで開くところを触ってみる。今日は隙間はない。横へと動かそうとしてみるもやっぱり動かないのだ。

 つまり昨日の出来事は半分くらいは夢だったということなんだろう。少しだけホッとした。


 俺は3階層へ下り、今日も鱗集め30分という名の素振りを始める。今回は双子が水溜りに浮いていることもなく、出だしは順調だ。きっと今頃先に進んでボスの近くにでも行っているのだろう。


「…あれ?」


 魚が一向に杖に食いついてこない…なぜだ?仕方がないのですぐ横手の水溜りで杖を前にだす…が、やっぱり釣れない。


「困ったな」


 これじゃあ俺が3階層に来た意味がない。10分ほど待ってみたがやっぱり食いつかない…まるでリノが叩きつけた後の様な…まさかね。それからもう少しだけ周辺の水溜りで杖をかざしてみたがどこも同じだった。


 仕方がないので俺は1階層へと戻ることにした。鱗集めが出来ないなら帰るしかないわな。タッチパネルに触れ1階層へ移動すると昨日見た壁のあたりに向けて白いものが壁の中へと入っていった。目を見開きその様子を眺めていると、よく見たら壁には人が入れるくらいの穴が開いており、そこに立っていたのもどうやら人のようだ。真っ白な地面で引きずっている長い髪の毛と、真っ白な袖や裾の長いワンピースのような服装をした少女が立っている。その少女もこちらに気がつきコテリと首を傾けた。真っ白な中で唯一色が目立つ紫色の瞳が俺を見た。


「見つかってしまった…」


 首を傾けたことによってその少女の頭が壁にめり込む形になっている。それによく見ると薄っすらと透けていた。そのことに気がついた俺の頭の中も真っ白になり、次の瞬間は頭の中も目の前もすべて真っ暗になっていた。多分俺は意識を失ったんだと思う。

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