第61話 再びお茶会

 次の日ダンジョンの1階層に足を踏み入れると、すでに来ていたファーナさんが2人の女の子と一緒にいた。昨日あった少女達だ。その2人といたファーナさんはどこか表情を曇らせている。


「えっと君達は昨日の…」

「ミネルヴァよ」

「リノル…」

「あーミネルヴァさんとリノルさんね」

「かたっくるしいわね…ミネって呼びなさいよっで、あんたのことは……あれ?」

「私はリノ。この人たちの名前…まだ」


 名前を聞きそびれたことに気がついたミネは慌てた様子ですぐに聞き返してきた。


「そ、そうよっこっちだけ名のるなんて不公平だわ!」

「聞き損ねた……」

「リノ~~!!」


 …漫才かなんかでも見てるみたいだとかいったらもっと怒りそうだな。


「でっ名前は!」

「えっと俺が芳雄でこっちが…」

「健太様だ」

「ファーナです…」

「ヨシオにケンタにファーナね…覚えたわ」

「違うっ健太様だ!!」

「あーはいはい、で昨日のお礼なんだけど…」

「無視すんなっ」


 健太に付き合っていたら話が進みそうもないので、ミネに話を進めるように言って健太の口を塞いでおく。もちろん手で押さえても余計騒がしくなるので、健太の好物の酢イカを口に捻じ込んで黙らせておこう。これで食べている間はしばらく大人しい。


「お礼…なんだけど…えーと…なんだっけ?」


 今度は健太の食べているものにミネの視線が釘付けになってしまって、会話が進まなくなった。それを見ていたリノが軽くため息をついた後、ミネのポーチの中から何かを取り出した。


「これは…?」

「私が混ぜて焼いた…ミネが分量計った…」


 取り出されたのはカップケーキだと思われる代物だ。どうやらお礼に作ってきてくれたらしい。


「人数分、ある」

「ふむ…じゃあ飲み物がいるな。ちょっと取ってくるから待ってて」


 俺は一度ダンジョンの外へ出てペットボトルの紅茶とレジャーシートを取りに行った。本当は温かい紅茶とかが入れられるといいんだが、俺はティーパックのヤツしか入れ方を知らないからやめておいた。


 すぐ戻ってきてレジャーシートを広げるとみんなに紙コップに入れた紅茶を渡し、リノからカップケーキを受け取った。


「甘くない、から…これかけて食べる」


 リノが取り出した入れ物の中には何かとろっとしたものが入っているのが見える。多分メープルか蜂蜜ってところかな?みんなそれを受け取り各自自由にかけていく。俺はまあ今回はかけないでいただくことにした。


「じゃあありがたくいただくね」

「どぞ…」


 みんな一斉にカップケーキにかぶりつく。そして…同時に動きも止まった。


「ご…ごふっ?!」


 むせた健太が慌てて紅茶をあおる。次々と口を押さえている人たちが紅茶に手を伸ばし飲み干していく。


「塩辛い…ケーキか?」


 かろうじて甘みを追加しなかった俺だけがしょっぱいとだけ思っただけで済んだが、甘みを足すともっと酷いことになっていたみたいだ。みんな涙目になってフルフルと震えている。


「ミネ…余分なこと、した?」

「…砂糖があったから少しいれただけだよっ?」

「これ、どう考えても塩の味…」

「……てへっ」


 みんなの視線がミネに集中してたのは当然の結果だった。なれない人は余分なことすんなって話だな。


 

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