第43話 2階層のボス予想

 目の前の光景をぼんやりと眺める。ここはダンジョンの中だというのにどうやら今日も比較的平和なようだ。ただ、健太がリトルウルフに弄ばれてるだけだ。


「いいおとりだな~」

「助かっちゃうね」

「早く処理してくれっ痛くないがこいつらなんなんだほんと!」


 昨日も見た光景だけどなぜかリトルウルフはみんな健太に寄っていく。そしてかじる。ここまでがワンセット。おかげで俺とファーナさんはコロンの体当たりを避けるだけでいいので大変楽である。


「不思議だよね~この子達ケンタのとこしかいかないもんね」


 ちなみに今日は昨日とは変えて左回りで移動をしている。ボスがどこを歩いているかわからない以上どこを歩いても変わらないので囲まれないように壁沿いを歩くことだけを決定していた。


「あ~~折角のマントに穴がぁ…」


 どうやら結構気に入っていたらしい赤いマントに穴が開き始めたらしく、健太が落ち込んでいる。まああれだけリトルウルフに噛まれればただの布なんてひとたまもないだろうな。


「えーと…味が出てきた感じ、ですかね?」

「新品より使い込んだ感じになっていいかもな」

「そうかな~…」


 マントをつまみ上げ眉を寄せている健太に俺とファーナさんがそれっぽくフォローする。実際はマントなんてどうでもいいが、やる気にかかわってくるなら重要なことだ。こんなダンジョンの中で気力をなくしたらたまったもんじゃない。


 健太が気を取り直し立ち上がったのを確認すると俺達は再び左回りで脚を進める。この様子だともうしばらくここで狩りをしてレベルと装備強化をしてから進む方向にするのが理想なのだが、そもそもボスの行方がわからない上に3階層への入り口がどこにあるのかも分からないので、入り口を探しつつ狩りを俺達は続けることにして進むしかない。


「なあ…ここのボスって何だと思う?」

「あー1階の時はでっかいスライムだったからな~じゃあやっぱここもコロンかリトルウルフのでっかいヤツじゃないのか?」

「えーその大きいのがリトルウルフだとしたら…ケンタまずいね」

「ファーナさんもそう思う?」


 俺とファーナさんが頷きあっていると健太がその状況を思い浮かべているのか、視線を上に上げてなにやら考え込んでいた。


「もしかしてそれだと…でっかいのが突進してくるってこと…か?」

「そうかもな」

「そうかもね」

「う~わぁ~~~かんべんしてくれぇ…」


 まあ、健太にリトルウルフが向かってくる原因がわかればそれも回避できるんだろうが…わからないからどうしようもないわな。


「流石にでっかいのに噛まれたら歯形じゃすまないと思うぞ」


 といった瞬間背後でドォーーンと大きな音がして砂埃が上がるのを視界に捕らえた。

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