伝説の到来(6)
ゼフォーン本星では解放を喜び、抵抗の意思を継続するよりは復興へと目が向いている。暮らしを充実させるほうを重視する傾向に変わってきた。
それは暫定政府の方針でもあり、大統領トルメアが奨励している方向性。まずは人口が回復せねば国体維持に困ることになってしまう。
抵抗活動に身を投じていた者も一部は故郷の復興へと組織を離れていった。残った戦力から補給を担う部隊とその護衛戦力を除けば、実働戦力はそこまで削減せざるを得ない。
アルミナからの圧力を減じるためには国家としての意思を示さねばならない。しかし割ける戦力は小さく、負担ばかりが増えるのを憂慮する声がトルメアからも届いている。
(少し時間を掛けて力を蓄えてはって言ってるし、一案だとは思うぜ)
リューンは彼女から直接言われた言葉を思い出す。
(だがな、ワームホールを挟んで小競り合いを繰り返すのも金がかかるし、復興の負担になれば外聞も悪い。それなら一気に片を付けたほうがいいだろ。俺みたいな乱暴者の思考だけどよ)
彼は負ける気など毛頭ない。
アルミナ本星から1200
本星を背負う意識がそうさせるのか、王子を奪われプライドを傷つけられたと感じる所為なのか、アルミナ軍は勇猛果敢に攻め入ってこようとする。対する
「やってくれるね!」
激しいビームの応酬にアルタミラは敵軍の意気を感じているようだ。
「当然だ。ここで押されるようでは彼らにも後がない。本星まで攻め込まれるようだと体制に批判が集まってしまうだろう」
「とはいえ、これはなかなかに厳しいですよ」
切り込むダイナにフレッデンが続こうとするが、二機とも押し戻される。ジェットシールドを掲げて進もうにも直撃が多い。シールドコアが溶け落ちれば機体にビームのシャワーを浴びねばならず、どうしても勢いは削がれる。
「こっちだって正念場だぜ。気合い入れて行けよ」
モルダイトが先輩として皆の意識の下支えをする。
「ここが腕の見せどころ!」
「じゃあピートが盾になって。続くから」
「うおい! 僕に犠牲になれと言うのかよ!」
ペルセイエンの軽口に空気も軽くなる。
敵艦隊は三十隻を数える。アームドスキンの総数では七百を超えるだろう。目の当たりにする脅威に気圧されていては数的劣勢は覆せない。ダイナチームはそれをよく心得ている。
「誰が漢気を見せてくれるのかなぁ? まさか僕に行けとか言わないよねぇ?」
小器用なミントであればこのビームの嵐もくぐり抜けられるかもしれない。
「行っちゃえば? 私が援護するから」
「行っちゃう?」
ビームカノンを振りながらフランチェスカが賛同するとミントも乗っかろうとする。
「お遊びはそんくらいにしとけ。付いてこいよ」
「わお! リューンさん、格好良い! 僕、惚れちゃう!」
彼女の黄色い悲鳴には笑いの成分が含まれている。
両手に握った15mのフォトンブレードを相棒にリューンは嵐へと飛び込んでいく。左肩を貫く軌道で走った輝線を感知した彼は、右のブレードを交差するように振り抜く。剣身を形作る力場が収束された重金属イオン噴流を上下に断ち割る。
ビームのシャワーに正面から挑み、ことごとく斬り裂いていく姿は恐怖を感じさせるのだろう。より多くの砲撃が集中してくるが、輝線の走る順番を頭に入れて腕を振るい続ける。
「よし、続いて切り込め。好き勝手に撃たせないよう乱戦に持ち込むぞ」
パシュランという傘の影に入り込んだダイナがチームを牽引する。
「ビビって遅れんじゃねえぞ!」
「あんたこそ一発でも抜かせたら承知しないから!」
そう言いつつもフランチェスカの狙撃が敵中に火球を生み出している。その分だけ彼の負担は軽くなっていっていた。
爆炎とともに命を削り合いながら両軍は接近していく。中破して一時帰投する機体が脱落していく中、近接戦闘へとなだれ込んでいった。
戦場の主役は薄紫色のビームブレードへと変わりつつある。牽制のビームが交錯し、円弧を刻む光刃がアームドスキンの手足を斬り飛ばし、ときに青白いターナブロッカーの閃光が広がって命が散ったのを教える。
「遅ぇ!」
シールドを掲げようとする
「うおおおー!」
「見えてんだよ!」
爆炎を貫くビームを断ち割り、突っ込んでくる
「避けなさいよっ!」
「言われるまでもねえ!」
上体をかがませるとそこを狙撃砲が通過し、迫っていた機体の胴体を貫いた。
乱戦に持ち込んだ
「好きにはやらせんぞー!」
共用回線から吠える声が聞こえる。
「いたのかよ、おっさん!」
「リューン・バレルー! 貴様ぁー!」
肩に金線を刻んだガラントのローディカが異様な気配で突っ込んできた。
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