破壊神の秘密(9)
討伐艦隊は、虚空を見渡す目とその指し示す導きによって進んでいる。
「薄い……、これか! 重力場レーダーに感! 特務艦だと思われます!」
ようやくキャッチした。
「ベクトルをずらして黄道面へ加速。追い抜きざまに回り込みなさい」
「了解!」
ラティーナが操舵士に指示を与える。
ジーンのもたらした航路要素で進路予想を行い、気取られないよう転進しつつ追尾してきた。接近してきたところでユーゴの
「まだ気付いていると思わせないで。確実に進路を阻止」
状況はデリケートだ。
「もうこちらを掴んでいるのですね?」
「そうよ。どうやって誤魔化したのか、連中、開示されてない広範囲重力場レーダー技術を持っているの」
従来型は宇宙でも10
それによって討伐艦隊の位置を捕捉した特務艦が警戒態勢に移行したところで、待機状態に入る振りをしてジーンは脱出してきた。
「この根深さはその所為……」
ラティーナが呟く。
「思想そのものは当時から潜在していたってことなのね」
「そうとしか思えないでしょ? 内側に入って驚かされたもの」
ジーンも思い出して憮然としてしまう。
「じゃあ、わたしは出撃準備に入るから。ユーゴもいらっしゃい」
「うん、母さん」
「準備いい?」
渡されるヘルメットを被りつつ問い掛ける。
「もちろんです、ママン。機体調整もお預かりしたデータとデュラムスの
「いい子ね。帰ったらご褒美にハグしてあげる」
「光栄の至りー!」
くるくると踊る整備士の男から、息子のほうに目を走らせる。ユーゴも専属整備士の女性にヘルメットとスキンスーツの接続を手伝ってもらい、白い機体へと乗り込むところだ。
『
合成音声を聞きながらスクロールするチェック項目に目を通す。
(さてと、協定者の実力、どんなものかな。わたしに付いてこれる?)
そう思ったところに出撃命令が格納庫を震わせた。
磁場カーテンをくぐって僚機が次々と真空の宇宙へと飛び出すと、フットラッチに足を置きカタパルトで加速して飛び出していく。ジーンは中央
「ユーゴ、付いてきなさい」
「はい。リヴェリオン、出ます!」
データリンクで方向を確認して、指で示すとともに彼に随伴を指示した。
アル・スピアの翼を模した
「隊長、行くよー?」
レクスチーヌの甲板にユーゴが声を掛けている。
「俺たちも続くから突出するな。遅いぞ、オリガン」
「行けますよ!」
「待ってー、フレア!」
「置いてくよ、メル」
アル・ゼノンを先頭に、アル・スピアが四機編隊を組もうとしている。
「スチューが急がせるからー!」
「仕方ないだろうが! ターゲットがこっちの意図を見抜いて加速を始めたんだからな」
特務艦を捕捉はしているが回り込むまでいかないところで勘付かれてしまったらしい。加速に合わせて出撃命令が下ったのだ。
(面白い子たち。さあ、そろそろ本気出すけどどうかな?)
ペダルを踏むと同時に、
「ぎゃー! 速いー! 無理ー!」
「どうなってる!?
編隊を取り残して一気に加速した。
『ほう? なるほど』
「すごいね、母さんのアル・スピア」
そう言いつつもリヴェリオンは付いてきている。美しい姿勢で黄色い噴射光を引きながら。
『推進ベクトルが機体重心を正確に射貫くよう姿勢制御しているのだ。更にパルスジェットまでも感応制御で一時的に推進力に使用しているな』
「ご名答。さすがはゼムナの遺志っていうところね」
アームドスキンの推進機は機体重心を捉えるように配置されている。それでも複雑な機構を有した戦闘機械、姿勢によっては僅かに重心を外してしまうのだ。普通は自動的に補正が掛かって、各部のパルスジェットが推進ベクトルを維持している。
しかし、ジーンは様々な方向へと加速するときに最適の姿勢を取るよう感応制御をしている。生み出される推力を無駄なく加速力に利用しているのだ。それ故に彼女はアームドスキンを同型機より速く飛ばせることができる。
結果として付いたあだ名が「
「それでも付いてくるってどういうこと?」
『性能が違うのだよ。我の機体を侮ってもらっては困るな』
「それは失礼」
ジーンは舌を出す。
「見えてきたよ」
彼方に隠密航宙をしていた特務艦がその姿を浮かび上がらせていた。
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