第157話『実はなになに・2 ホッチキス』


せやさかい・157


『実はなになに・2 ホッチキス』さくら  






 実はステープラーというのが本名らしい。




 留美ちゃんがググってはいけないと言われていたので、詩(ことは)ちゃんに聞いた。なんせ、廊下を挟んで向かいの部屋やからね。


「え、ホッチキスじゃないの?」


 詩ちゃんもわたしと同じ反応。


「……ホチキス? 東京出身の子は、そう言っていたような気がするかなあ?」


「あ、それはあるかも! 大阪弁は『っ』が入るのが多いもんね、たとえば……」


 メンコ⇒ベッタン、  洗濯機⇒せんたっき、 儲かりますか?⇒儲かりまっか? 行きますか?⇒行きまっか?、 おなごしさん⇒おなごっさん、 ごつい⇒ごっつい、 等々


「ああ……なんか違うようなきがするけど、ま、そんな感じかなあ……さくらちゃんの言葉って、ちょっと古い大阪弁かも」


「あ……文芸部やからやろか?」


 この一年、あまり本は読めへんかったけど、頼子さんと留美ちゃんの話はたくさん聞いたので覚えたのかも。


「うん、そうだよ。ゆるーくやってるから自然に身に付いたんじゃないかなあ」


「あはは、そやろかあ(o^―^o)」


 喜んでるとテイ兄ちゃんが入ってきた。


「ホッチキスの本名はステープラーやぞ」


「もう、入る時はノックしてよね」


「開いてたでえ」


「開いていても!」


「外国ではホッチキスでは分からへん」


「そうなんや」


「だったら、なぜ、ホッチキスなんて言うの?」


「それはやなあ……まあ、食べながらにしょ」


 テイ兄ちゃんは衣の懐から紙包みを出した。


「あ、回転焼き!」


「まだ、開いてないのに、よう分かるなあ」


「匂いで分かる!」


「田中のお婆ちゃんとこで始めはったんや」


「「いっただきまーす!」」


 食べながらの説明では、ホッチキス言うのは、元々は機関銃のメーカーらしい。その機関銃のメーカーか関連会社が発明したとか、そう言えば針を繰り出す仕掛けが機関銃の仕組みと似てるらしい。


「なるほど、伊達に大学出てへんねえ」


「褒めちゃダメよ、単なるオタクの知識なんだから」


「コトハあ!」


「あら、怒った?」


「いや、いまや世界では『オタク』は誉め言葉やねんぞ!」


「プ、妹と従妹の前で胸張ってもねえ」


「アハハハ」


 どこまでも中のええ兄妹やなあ。


「「どこがあ!?」」


「あ、いまの、そういうとこが(^_^;)」




 あくる日、学校で月島先生に呼び出される。




「あ、文芸部に入部希望の一年生がいるから、明日にでも会ってやってくれる?」


「え、入部希望!?」


「あれ? なんか不服そう?」


「ああ、ちゃいますちゃいます(^_^;)」


 留美ちゃんが『文芸部は今のママがいい』という言葉を思い出したからとは言いません。


「でね、会うのは、とりあえず学校の部室でやって欲しいの、一応は学校の部活だからね」


「は、はひ!」


 動揺すると、すぐには戻りません。


「あ、でも、なんで先生が文芸部の伝言を?」


「あ、わたし、顧問になっちゃったから」


「え、あ、はひ!」


 ただただ、驚きのさくらでありました。  

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